教員のワーク・ライフ・バランス ― 制度を変えなくてもできること ―(8)教委や国が思い切った姿勢を

eye-catch_1024-768_sawata先生の幸せ研究所代表 澤田真由美

「学校は教育委員会に何も求めないこと」。学校の働き方の見直しを進めたいという某市教委の相談に乗ったとき、市教委からの提案の一文に目を丸くした。その場に学校現場の方はいなかったが、もし現場の目に触れていたら気分を害したことだろう。ここまで露骨な教育委員会事務局は珍しいが、似た状況は少なくない。

働き方の見直しをする学校の背中を押すことが必要だと、前回連載で述べた。一つは孤立させないことである。丸投げにしないで、教育委員会も本気で一緒に考えることだ。

参考になるのは福岡県春日市教育委員会だ。資料のような通知を示し、校長会では取り組み事例の発表も行ってきた。

m20180205左に学校がすること、右に教委がすること。多くの教委は左だけではないだろうか。春日市教委はいくつか思い切った取り組みを行っているのだが、そのうちの一つ、「研究指定の休止(廃止)」を紹介する。

2007年以前、他市と同様に春日市も市の研究指定校制度をとっていた。よくある形と同様に、3年間指定で徐々に予算が上がり、3年目に大きな研究大会をして分厚い研究冊子を配っていた。その準備で教員は夜遅くまで働き、疲弊した。しかし、その準備にかけた時間と労力が必ずしも翌日からの授業に生かされていないことも多かった。分厚い研究冊子はだれが読むのかと市教委事務局が校長に尋ねると、「う~ん……」という返事。「お金と時間の無駄はやめよう」と廃止した。

私は研究をやめようと言っているのではない。前例にとらわれない決断をした教委があることを知ってほしいのだ。「定時退勤日」や「タイムマネジメント研修」をしたから、あとは「学校頑張れ」だけでは全く不十分で、教育委員会にもできることはいくつもある。

校園長・教頭研修で研修させていただくときに、本音を出しやすくするためにこう聞くことがある。「教育効果があると分かっているが、働き方改革のために見直したいものは?」。この枕ことば「教育効果があると分かっているが」が大切で、これにより、いわゆるタブーも出しやすくなる。「部活動・宿泊行事・宿題・研究指導案・○○教育・地域関連のもの」など。この枕ことばがないと、思い切ったものを出す人はほぼゼロで、当たり障りのないものしか出ない。つまり本当は部活や大きな行事を見直したいし、学校裁量でできると知っているのだが、通常それをテーブルに上げられないでいるということである。これでは改革は進まない。

最近は長時間労働是正について、「思い切った方策を」などと書いた通知を出す教委が増えた。

「調査を減らす」のがはやりつつあり、それはそれで必要だが、しかしそもそも減らせるはずの調査を長年続けてきたのが問題であり、無駄はやめて当然ともいえる。

「思い切った方策を」というのであれば、教委や国こそが思い切った姿勢を見せることである。そうすれば、覚悟を持って取り組んでいる学校を孤立させず、様子をうかがっている周囲の学校の背中を押すことになる。

前回予告した「評価を変える」については次回に述べる(春日市教委は他にも、学校訪問廃止など思い切った取り組みを行っている。興味があれば、先生の幸せ研究所のホームページから紹介動画をご覧いただける)。

関連記事