教員のワーク・ライフ・バランス ― 制度を変えなくてもできること ―(9) 働き方見直しにインセンティブを

eye-catch_1024-768_sawata先生の幸せ研究所代表 澤田真由美

部活動の設置・運営は法令上の義務ではない。部活動に限らず、法令上の義務以外のことをさまざま抱えているのが学校の実態である。

部活動のように大きな時間を使うものもあれば、スピーチ大会のように小さなものもある。手放せない理由はさまざまで、これまでにも述べてきたが、ひとつには「子供のためだから」という学校内外の声がある。しかしそれで時間を取られて、本来の業務において目の前の子供に十分向き合えなくなっている。

この矛楯を解決したい校長は多いのに、踏み切れない背景の一つは、ここに切り込むのを学校や校長の「勇気」に任せているからだ。

切り込むには保護者の理解や校内の意思統一などのハードルがあり、しかも正解や特効薬はなく、混乱や失敗の可能性すらある。こうしたリスクを上回るインセンティブや危機感がないと、なかなか傍観者から当事者になりきれない。

インセンティブのひとつとしては、学校での働き方見直しに高評価を与えることだ。思い切った改革や勇気ある決断で業務のスリム化に取り組んだ学校や、休職者や残業時間が少ない学校をたたえ、学校長を高く評価するならば、前例にとらわれない発想や精選に踏み切りやすくなる。思い切った改革を国や教委が積極的に承認することだ。

しかし現状は「増やした=実績」となる場合が多く、在職中に何を増やすかに目がいきがちである。

教員の自己評価シートには「取り組むこと」は並ぶが、「減らすこと」はほとんど見当たらない。「歴代校長の『実績』が積まれる一方」という学校の声もよく聞く。

ある小学校で「水膨れした業務」を思い切ってまとめたり、なくしたりした。学校内外からは批判もあったが、教師にゆとりができ、細やかに子供を見ることができるようになり、結果、子供が生き生きとし始めたのを見て、批判していた人たちも納得するようになった。

こうした取り組みを校長や学校の覚悟に任せておくのではなく、人事評価や表彰などでオフィシャルに承認していくのだ。民間には、ホワイト企業を表彰する制度など、参考にできるものもある。

同時に、危機感を持たせる評価も必要だろう。過労死ラインを超える教員がこれだけいるのに、残業は個人の自由であると悠長なことは言っていられない。部下の残業が多ければ、その上司の社内評価が下げるなど、これも民間の取り組みを参考にできる。

年末の緊急対策では予算も示されており、ハード面の改善はあるだろう。しかし、勤務時間を意識して「変える」「帰る」のは学校であり、実際に働いている一人一人である。

「変えやすい」「帰りやすい」学校になるために、教育委員会と国が「学校の背中をもっと押すことが必要だ」と、連載7回から今回まで述べてきた。

「予算は付けた、人は増やした、あとは学校頑張れ」ではなく、ひとつは「教委や国こそが思い切った姿を見せることにより、覚悟をもって取り組もうとしている学校を孤立させないこと」。もうひとつは「従来の評価を変えて、働き方見直しへのインセンティブと危機感を与えること」。

これにより、教育のプロとしての学校裁量を尊重することとなる。

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