校長のパフォーマンス(83)アインシュタインの質問

eye-catch_1024-768_takashina-performance教育創造研究センター所長 髙階玲治

インターネットが発明されて20年以上たつ。今では生活に無くてはならないものになった。しかし、科学技術は限りなく進歩するから、今後どのような世界が展開するであろうか。

ケヴィン・ケリーの『インターネットの次に来るもの』(NHK出版、2016)は、未来予測を占うよりも、未来に向けて私たちがどう考えるべきかを多様な視点から述べた図書である。副題は「未来を決める12の法則」である。

難しい内容は置いておいて、例えば情報環境はあらゆるものがチップに記録されるという。携帯電話の位置と記録はもちろん、電子小売店では買ったもののみでなく、何をみていたか、何を買おうとしたかまで記録される。スマートホームでは、人の行動が記録され、室温が調節される。フィットネス・トラッキングとして、身体活動の時間や場所、起床就寝の時間を含めて24時間記録される。

これらはほんの一部にすぎない。ケリーはテクノロジーの進化は新しい未知の世界を創り上げ、必要なデータ量やパワーは人間を超えるという。ただ、全てが解き明かされてしまうとき、個人の知識は何の役にたつのか。人は問い、答えを求め、マシンが即座に回答してくれる。

この図書の最後の章は「BEGINNING」だが、その前は「QUESTIONING」である。つまり、マシンの答えがどんどん安く豊富になることから、「質問」の良さが重要になるという。」良い質問は、「それ一つで100万個の答えに匹敵する」という。そして突然のようにアインシュタインの「質問」が用意される。彼が少年のように自分に尋ねた質問だという。

「良い質問とは、正しい答えを求めるものではない」「良い質問とは、すぐには答えがみつからない」「良い質問とは、現在の答えに挑むものだ」「良い質問とは、ひとたび聞くとすぐに答えが知りたくなるが、その質問を聞くまではそれについて考えてもみなかったものだ」「良い質問とは思考の新しい領域を創り出すものだ」「良い質問とは、その答えの枠組み自体を変えてしまうものだ」「良い質問とは科学やテクノロジーやアートや政治やビジネスにおけるイノベーションの種になるものだ」「良い質問とは、予想もしない質問だ」「良い質問とはさらに良い質問をたくさん生み出すものだ」「良い質問とは、マシンが最後までできないかもしれないものだ」「良い質問とは、人間だからできるものだ」

一部割愛したが、アインシュタインの質問は人間にとって極めて大切なことを示唆している。私は、この質問を読んで、「これは教育の課題だ」と直感した。デジタル社会が急激に進展することは避けられないが、人間らしく生き抜くために、「答え」のみをすぐ求めず、「問い」を生み出す努力を重ねることの大切さである。ケリーが未来を決める法則に掲げている意味は極めて重要である。

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