保護者と歩む学校経営(1) 保護者と学校の心の壁

eye-catch_1024-768_nagahori_fin早稲田大学大学院非常勤講師 元茨城県牛久市教育委員長 永堀 宏美

学校行事の校長あいさつで「保護者のご理解とご協力をいただきたい」と、信頼関係重視の表明があるたびに、会場の隅では、保護者が「ああ、またか」「どこまで本気なんだか」と諦め顔でつぶやく――よくある光景です。学校も保護者も、同じ「子供の幸せな未来」というゴールを目指す者同士、協力し合えればこれほど心強いパートナーはいないのに、実際には大きな心の壁に隔てられています。

原因は、時代的社会的要因も絡み、さまざまに考えられます。保護者と教育委員の双方を経験した身には、両者が「互いを分かっているようで、分かってない」ことが誤解や不信の源となり、時にトラブルにまで発展してしまうのではと感じます。

例えば、学校や教委は、多くの保護者にとっては未知の世界、ブラックボックスです。どのような組織で誰が何を決めているのかよく分かりません。

大事なわが子を託す先への認識がその状態では、どうしても不安が膨れ上がり、猜疑心ももたげます。世間の風潮も手伝って、保護者はつい「学校のやり方は時代遅れ」「学校はいつも一方的だ」と批判的な姿勢になりがちです。そうした保護者の言動は、必ずしも学校を全面否定するものではなく、むしろその逆、つまり大きな期待の裏返しであるケースも多いのです。

保護者にとって「子供の学校」は子育ての根幹を成すもので、信頼できる学校に出会いたいと心から願っています。家族の引っ越し先の決め手が子供の学校(学区)なのは不動産屋の常識です。が、学校には必ずしもそう受け取られず、苦い思いをする保護者も少なからずいます。こうした状態を一気に解決するのは難しいでしょう。良好な信頼関係を目指して地道に取り組めば、必ず光は見えてきます。まずは両者の違いを認識することからスタートし、徐々に垣根を取り払い、信頼へとつなげることが大切と考えます。

本稿では、保護者の学校に対する要望や不安を明らかにするとともに、不安を払拭する関わり方や取り組み、改善案などを、入学説明会・卒業式・入学式を事例に伝えていきます。

それは決して保護者におもねる学校経営を勧めるものではなく、全ての保護者の声を代弁するものでもありません。保護者視点を意識した学校経営によって、良好なコミュニケーションが実現すれば、誤解や不信を軽減できます。それにより教職員も保護者もより安心して子供に関わることがかなえば、学校教育の本来の使命を果たす環境を整えられると考えます。