クオリティ・スクールを目指す(120)「いじめ」と脳科学

eye-catch_1024-768_takashina-school教育創造研究センター所長 髙階玲治

具体的ないじめ指導の提示

いじめはなくならない。なぜか。その理由を脳科学者ならどう答えるか。

「いじめは本来人間に備わった〝機能〟による行為ゆえ、なくすことは難しい」という。脳科学者である中野信子氏は、いじめは種を残すための脳に仕組まれた機能だから、むしろ回避策を考え、良好な人間関係を維持するのが最善策だという(『ヒトは「いじめ」をやめられない』小学館新書、2017)。

ヒトの肉体は他の動物と比べるときわめて脆弱(ぜいじゃく)である。生き残るためには「集団」が何よりも必要だった。そのための「向社会性」が集団をおびやかす自分たちと違う種類の人間を排除しようとする。

それは今でも大人社会に厳然と存在している。女性はグループを作り、男性は派閥を作る。同一レベルや行動を要求し、そこからはみ出す人間を蔑視する。そのため仲間意識の高い集団からいじめが発生しやすい場合があるという。

子供の場合もいじめはなくならない。そこでいじめの回避策を考えて対処する。

中野氏は、いじめは小学校高学年から中学校2年生に過激化するが、特に6月と11月が要注意だという。その時期は脳科学的にいうと日照時間の変化が大きいため、セロトニン(脳内物質の安心ホルモン)合成量のバランスがくずれ、気持ちが不安定になりがちだという。

また、その時期は大きな学校行事があって誰もが認められる機会になるが、それが終わると「報酬」がなくなるから、日常的に不満が増してクラスが荒れたりするという。

仲間意識が強すぎるのが問題で、個人と個人の関係はよいが、集団を強く意識する状態がいじめを発生しやすくする可能性が大きいことから、人間関係を薄めて排他感情を緩和することが大事だという。個性優先の指導が重要なのである。大人についても、メタ認知を高め、60%の間柄になるべきだとする。人間関係の流動性を高め、誰もが自由に交流できる社会になることだという。

中野氏は最近のいじめの増加から、イギリスの中学校のように、いじめの起こりやすい教室、トイレ、更衣室に監視カメラを設置してはどうか、と提案しているが、どうであろうか。

ただ、最近のいじめは多様化・複雑化しており、インターネットやSNSを使ったいじめも増加していて、その把握が極めて困難になっている。

いじめは脳に仕組まれた機能だといっても、いじめをしない、いじめを回避する行為を学ぶという、その生き方を身に付けることが教育ではないかと考える。