校長のパフォーマンス(84)教員の残業は「麻痺」なのか

eye-catch_1024-768_takashina-performance教育創造研究センター所長 髙階玲治

いま学校の働き方改革が実行されつつあるが、教師の認識には「残業は当然」とする風潮があった。授業準備やテストの評価など、勤務時間内では到底不足で、残業せざるを得ない実態が常習化されていたといえる。

しかし、なぜ教員は月80時間もの残業を当然として受容してきたのか。

働き方改革は企業でも課題とされているが、残業時間削減には反対という会社員もいるという。残業手当が家計に組み込まれていて、収入が減少すると生活に響くからである。

教員の場合、どれだけ残業しても4%以上の手当がつくことがない。「手当なし」でも残業に精を出す。なぜか。

『中央公論』3月号に会社員などの残業に関する興味深い調査結果が載っていた。中原淳東大准教授の『残業は「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」する』である。

残業の様態について中原准教授は、残業は仕事のできる人に「集中」する、周りがまだ働いているので帰りにくい雰囲気が「感染」する、残業した経験が上司にあれば残業は当たり前となって「遺伝」する、という。

ところで、興味深いデータが提示されている。残業時間が多くなれば仕事の「幸福度」や「満足度」が徐々に低下していき、月45~60時間未満ではかなり低くなる。ところが月60時間以上になると、なぜか「幸福度」「満足度」ともに高まるのである。「麻痺」状態に陥るという。

長時間残業層は、残業しない層に比べ、「食欲がない」2.3倍、「強いストレスを感じる」1・6倍、「重篤な病気・疾患がある」1.9倍と健康リスクがあるだけでなく、休職リスクも高まるという。

それでいて、残業せずにいられない層が確実に存在するという。「残業麻痺」を起こしているのではないか、と中原準教授は考えている。そして「残業麻痺」とは、「長時間労働の結果、自己認知に歪みが生じ、首尾一貫した行動や認識を保てなくなっている状態」と定義している。これは一種の病気ではないか。

今回の調査は、学校教員が入っていないが、サービス残業の多さの1位は教育・学習支援(幼稚園教諭や保育士、塾教師)であった。学校教員の場合、残業時間の多さは驚くほどで、例えば2月14日に千葉県教委の調査発表があったが、それによれば中学校教員は残業月80時間以上65%であった。

その何割かが「残業麻痺」を起こしているのではないか、と心配になる。

その意味でも、学校の働き方改革は緊急の課題であって、次年度から早急に取り組む必要がある。また、個々の残業時間を削減するのみでなく、新たな教育課程の充実に向けた取り組みを強化する方向で考えるべきである。各学校が積極的に働き方改革に取り組む姿勢が最も求められると考える。

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