保護者と歩む学校経営(6)卒業式 その3

eye-catch_1024-768_nagahori_fin早稲田大学大学院非常勤講師 元茨城県牛久市教育委員長 永堀 宏美

ルール遵守の本当の意味 命を守る

巣立つ子供たちに、ぜひ卒業式で伝えてほしいことがあります。ルールを守ることの本当の意味についてです。

学校の集団生活でルール順守は何度も強調され、指導されてきたでしょう。

「なぜ守らなければいけないのか」という問いには、「ルールだから」「守らないと皆が困るから」「先生や親に叱られるから」など受け身的な意義付けが多いようです。

「外からの強制力で仕方なく守る」という「やらされ感」は自発性を失わせ、「誰も見ていなければ守らない」「守るのはばからしい」と規範意識を曇らせがちです。「ルールを守ることで皆が気持ちよく暮らせる」という説明も、どこかうそくさく響き「そうは言っても実際には」と半信半疑の顔が並びます。

確かに、人間はみな心に弱さを抱えており、ルールは人の行動を縛る窮屈な存在として時に疎まれます。

利便性を追求する風潮の中では、ルールを守っていると何か損をしたかのような錯覚を覚えることもあります。

実際には逆なのではないでしょうか。ルールを守れば、社会も法律も大きな盾となって身を守ってくれます。ルールを守ることで自らの命を守り、今日まで生きてこられたのではないでしょうか。

例えば、横断歩道があるのは、人が安全に道を渡り交通事故を避けるためです。「横断歩道を渡りなさい」の真意は、「あの白線はドライバーの目に留まりやすく工夫されているので、人が車にはねられる危険を高確率で回避できる」ではないでしょうか。

海での「遊泳禁止」の真意は、「ここで泳ぐと命の危険が迫る可能性が高いので回避しましょう」であり、管理者の勝手都合による「この先を泳いではいけない」ではないのです。

全てのルールには、守るべき理由があり、「守ることで守られる」命があります。このままでは、ルールを味方に付けて命を守りきることができなくなるでしょう。

「仕方なく守らされる」ではなく、「ルールを守ることで命を護(まも)って生きていってほしい」と伝えてほしいのです。

加えて、ルールを守る人は信頼を得ることができ、それを積み重ねることで周囲に愛される存在になれます。それこそが、厳しい社会を生き抜いていく力となるのではないでしょうか。

家庭でもそれを伝える努力はしていますが、成長につれて親の言葉は届き難くなっています。学校から卒業の場で力強く伝えていただけたら、保護者も心丈夫です。

「頼りになる学校に通えてよかった」との実感は、卒業後も地域から温かい目で学校を見守るファンも育てるでしょう。