変容する生徒指導―模索する学校現場―(3)奇妙な併存―カウンセリングマインド・ゼロトレランス

修正_eye-catch_yoshida弘前大学准教授 吉田 美穂

「地毛であっても強制的に黒髪に染めさせる」「下着の色指定と教員によるチェック」など、理不尽な「ブラック校則」が話題となった。行き過ぎた校則が問題になるのは今回が初めてではない。30年前にも、当時の文部省は繰り返し校則の見直しを指示している。

校内暴力が吹き荒れた70年代後半以降、多くの学校が細かい校則を定め、厳格に運用する管理教育を展開した。80年代後半には生徒・保護者による裁判が相次ぎ、行き過ぎた校則は社会的な批判にさらされるようになった。90年には、神戸市の高校で遅刻しそうになって校門に駆け込んできた女子生徒が、規則通りに閉められた鉄製門扉にはさまれて死亡する事件が発生した。これをきっかけに、文部省は管理教育的な生徒指導からの転換を目指していく。

キーワードとなったのが「カウンセリングマインド」である。90年代には校内暴力が下火となり、いじめや不登校が生徒指導上の主要な課題と認識されるようになったのも、生徒一人一人の心を共感的に理解する教育相談的な生徒指導を後押しした。

ところが現場では、管理教育で対応してきた校内の秩序維持という課題が意識され続けた。00年代に入り、秩序維持に有効な手法として注目を集めたのが、アメリカ発の「ゼロトレランス」である。あらかじめ問題行動への罰則を明示し、例外なく厳格に適用する手法は、生徒・保護者への説明責任にも対応できるとして広がった。校門で頭髪の色をカラースケールでチェックし、違反があれば帰宅させる光景や、指導回数の累積で自動的に謹慎や退学などの指導が行われるケースがみられるようになった。

一人一人の生徒の内面に寄り添うカウンセリングマインドと、問題行動の理由や背景を問わず、寛容さや裁量抜きに行為のみを裁くゼロトレランスは、奇妙なことに現在、学校の中で併存している。10年に行った調査で、ある高校教員は生徒指導と教育相談を「ぶっちゃけ敵味方」と表現。「教育相談なんて甘っちょろいこと言っているんじゃねえ」「生徒指導みたいにガチガチやったってしょうがないじゃないの」――。現場は葛藤を抱えている。特別指導はゼロトレランス的なシステムでカバーし、不登校などのケースは教育相談が対応、と棲み分けている学校も少なくない。

それでよいのだろうか。次回は、いわゆる生徒指導と教育相談が一体となって、学校秩序の維持と個々の生徒のケアを両立させている高校の指導事例をみてみたい。