変容する生徒指導―模索する学校現場―(6)生徒の特性や背景を意識した生徒指導へ

修正_eye-catch_yoshida弘前大学准教授 吉田 美穂

昨年3月、福井県の中学校で2年生の男子生徒が校舎から飛び降り、自死した。

自治体の学校事故等調査委員会がまとめた報告書によれば、この生徒は2年生の10月以降、課題提出や生徒会活動の準備の遅れなどを理由に、担任や副担任から度々厳しい指導叱責を受けていた。課題の遅れなどに適切に対処できない中で自己評価や自尊感情を損ない「生徒会を辞めるように」との強い叱責を受けて絶望感を深め、自死に至った。

報告書で注目されるのは、自死に至る前の2月ごろ、同僚間でこの生徒について発達障害の可能性が話されていたこと、担任に「正しいことであっても、本生徒にはできないのだから、指導方法を考えないといけない」と伝えた同僚もいたという事実である。報告書では、

▽生徒がバランスの良い文字を書くことやマスの枠内に文字を収めることを苦手としていた

▽小・中学校の担任などへの聞き取りから、生徒が感情のコントロールを不得手としており、真面目で優しく努力家だが、対人関係が器用でなく傷つきやすい性格だった

▽独り言が増え、一人で抱え込む姿がしばしば目撃された――

ことを挙げ、学校は発達障害の可能性を想定して対応する必要があったと指摘している。当該生徒が発達障害であったかどうかは分からない。日常の観察の中で複数の教員が「この生徒は自分では解決できない課題を抱えているのではないか」と感じ、特性に合わせた指導方法が必要だと考えていたにもかかわらず、その指摘が生かされなかった事実は、極めて深刻で重い。

文科省が12年に行った「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する実態調査」によれば、通常学級に在籍し、知的発達に遅れはないものの「学習面又は行動面で著しい困難を示す」児童生徒は、全体の6.5%、40人学級に2~3人の割合だ。診断の有無によらず、失敗や問題行動を繰り返す生徒には、発達障害の可能性を考慮しながら接することがどの教員にも求められている。

生徒が抱える課題は、発達障害だけではない。ある高校で、病気でもないのに、しばしば連絡もなく学校を休んでしまう生徒がいた。進級を心配して叱る担任に、その生徒は言った。「バス代がない」。生活保護家庭で通学定期代相当の支給はあったが、保護者によって使い込まれてしまった。生徒がそれを打ち明けるまでに、教員との長い応答と、その中での信頼関係の構築が必要だった。「子どもの貧困」もまた、生徒指導に大きな問いを投げ掛けている。子供たちの背景にあるものに丁寧に目を向けること。生徒指導の大前提とする必要があるだろう。