変容する生徒指導―模索する学校現場―(8)部活動と生徒指導を考える

修正_eye-catch_yoshida弘前大学准教授 吉田 美穂

今回は、部活動と生徒指導の関係について考えていきたい。部活動は、生徒の「自主的、自発的な参加」を前提とした教育課程外の活動である。だが、中学2年生の部活参加率は9割近くに上り、運動部についてスポーツ庁が「平日2時間以内、週2日以上の休養日」などの指針を繰り返し示すほど、生徒が長い時間を過ごす活動となっている。教員にも負担となっており、「ブラック部活動」という指摘もある。諸外国にも例をみない日本の部活動拡大にはさまざまな要因が考えられるが、1980年代に広がった部活動を非行防止手段として位置付ける考え方も影響を与えている。

私が1990年に入った高校現場では、「部活動はボランティア。好きなことやれば」と言う先輩もいたが、「若い人は頑張って。生徒指導上も部活は大事」という声の方が大きかった。部活と生徒指導を関連付ける教員の姿を、たびたび見てきた。部員の学習態度や服装も含めて指導する顧問や、生徒指導上の課題がある生徒について「あいつは、〇〇部に入れて私が面倒見ます」と宣言する教員にも出会った。「自主的に」参加しているからこそ、「部活に参加したかったら、レギュラーになりたかったら、まずは日常の生活態度から」という顧問の言葉は、生徒に強く響く。厳しい指導姿勢を示す顧問が生徒指導主任を任される例も少なくない。運動部出身で顧問として指導する教員は、そうでない者より、上下関係の中で「毅然とした」指導を行う経験を積んでおり、それに頼る現場の状況がある。

だが、それでいいのか。部活動には、固有の教育的意義がある。教育課程外の部活動を生徒指導の手段とすることは、正規の教育課程を中心とした学校の在り方や教員の仕事の優先順位をゆがめる可能性がある。一部の部活動に見られる指導方法には課題もある。バスケ部の生徒が顧問の体罰によって自死に追い込まれた大阪府立桜宮高校の事件は極端な例だが、言葉の暴力も含めた高圧的な「指導」が、一部の部活動に残念ながら存在するのではないか。

(1)児童生徒に自己存在感を与え(2)共感的人間関係を育成し(3)自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助する――という生徒指導の視点から、部活動における指導も見つめ直す必要がある。

この連載で触れてきたが、見えづらくても生徒の問題行動の背景には、発達障害や貧困、家族関係などがある場合もある。生徒間のトラブル対応も、丁寧な解きほぐしが求められる。「毅然と」対応する以上のスキルが必要とされ、顧問一人で解決できるものでもない。生徒指導を部活動に依存する発想を見直す必要があるだろう。

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