変容する生徒指導―模索する学校現場―(10)チームによる生徒指導と困難校への支援

修正_eye-catch_yoshida弘前大学准教授 吉田 美穂

生徒指導は、原理的に不確実性に満ちた営みである。子どもは、それぞれが独立した人格、個性を持つ成長途上の存在であり、「期待通り」の行動を示さないのはむしろ自然である。教員は何とか「望ましい」方向へと児童生徒を導き、複雑で流動的な多数の主体が入り乱れた学校に秩序をもたらさなければならない。

どうしたら適切に対応していけるか。児童生徒の行動の後ろにある要因に思いを巡らせながら、児童生徒の声に耳を傾け、多様な表現で働き掛けられる対人専門職としての力量を付けていくことも大切だが、それ以上に、チームで対応できる生徒指導の体制をつくっていくことが求められる。個々の教員が評価の目線にさらされながら、孤立して生徒指導に当たる状況は、最も避けなければならない。思い通りにならない子どもを前に、自らの指導力が危機にさらされているという感情は「行き過ぎた」指導につながりやすい。常に複数の目で見て対応することで、リスクが低減できる。

学校にはさまざまな立場の教員や専門職がいる。担任、学年団の教員、生徒指導担当、養護教諭、部活動顧問、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、管理職。それぞれが異なる視点から児童生徒を観察し、生徒が抱える困難や人間関係のトラブルに気付くこと、相互に連携して対応することが求められる。生徒の中途退学を大きく減らした高校を調査したとき、「今は、一人の生徒に対して、たくさんのアクセスポイントがある」と表現した教員がいた。担任や部活動顧問が抱え込むのではなく、児童生徒が学校内でさまざまな大人に出会い、複数の居場所を持ち、大人同士がつながっていれば、児童生徒の危機への学校の対応力は増す。

この数年、校内カフェを作る動きが、大阪府や神奈川県の高校で広がっている。ユースワーカーやボランティアが、飲み物を囲んで生徒と交流しながら、必要に応じて相談に乗る。生徒の抱える課題が見いだされ、福祉などの支援につなぐこともある。運営するNPOは、校内カフェを、授業を中心とする学校の空間でも、家庭でもない第三の居場所「サード・プレイス」としている。外部の人材との連携も積極的に検討されてよい。

最後に、教員が余裕を持って生徒指導に当たっていくために、必要な条件整備について述べる。生徒指導の大変さは学校によって偏りがある。一般に、中学校では校区の社会経済環境が厳しい学校、高校であれば入学する生徒の経済的背景が厳しい学力下位校ほど、問題行動は起こりやすい。こうした学校では教員が疲弊する現実がある。

スクールソーシャルワーカーの導入も進むが、非常勤の専門職の力を生かして連携していくためには、コーディネートする教員の存在が重要であり、その職務負担はむしろ増える傾向にあるという調査結果もある。

教育行政には、こうした学校への積極的な教員の加配を求めたい。

(おわり)