AI時代の学校教育と教師に求められる資質能力(2)ラーニング・マネジメント力に着目

eye-catch_1024-768_matsuda_fin東京学芸大学副学長 松田 恵示

学校では今、「アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)」が広がりつつある。子供たちが仲間と協働しながら、主体的に課題解決に取り組む学習である。ところが、AI時代には、それ以上にもう一つの学習が進むと予想されている。それが「アダプティブ・ラーニング(Adaptive Learning)」(以下ALと略記)である。

ALとは、子供たち一人一人の習熟度やレディネス(学習準備状況)に応じて、最適な学びを提供する仕組みをいう。最適な個別学習は子供たちのモチベーションも保たれやすいし、学習効率も高い。現在は、eラーニング、タブレット学習など、ICTを利用するデジタル教材として教育関連企業が開発・商品化し、家庭学習や塾・予備校での導入が進んでいる。そこでは個別指導に適したALによって、労力をかけない学力の定着が目指されている。

もちろん、このように一人一人を見とり、最適化した個別な学びを促すことは、熟練した教師の指導技術そのものであった。ここには、専門職としての教師の「知能」が総動員されている。しかし、40人ほどの子供を一つの集団として教える現在の授業形態では、個別指導に限界がある。

それが、AI時代には外部化した「知能」が、熟練教師が持つ質の高さをひょっとすれば超えて、提供される可能性がある。これは、単にドリル教材の高度化を指すのではなく、主体的な「アクティブ・ラーニング」を支える高度なALが広がるということである。教師と子供に必要な、インタラクティブな関係が平準化するのである。

もちろん、ALが学習の全てを担うことができるわけではないし、そもそも教師の仕事は学習指導以外にもたくさんある。けれども、協働したり話し合ったりする学びや、子供によっては教師自身が対応しなければならない場面を、究極の個別指導であるALと組み合わせて、従来の「1対40」を基本に行われていた「授業」の形態から離れていくことは避けられないだろう。

そうすると、今話題の「カリキュラム・マネジメント」のみならず、カリキュラムの個人化が進み、子供たち一人一人のカリキュラム全体の設計図を構想する「ラーニング・マネジメント」の力や、「学びのためのコーディネーション」を実行する力が、教師の専門的スキルとして浮かび上がってくる。

ヤフーの安宅和人氏によれば、AIの利用は、言語や画像の識別や意味を理解する「識別」、数値やニーズ・意図の予測、さらにはマッチングなどをする「予測」、表現・デザインの作成や行動・作業の最適化・自動化をする「実行」の三つに分けられる。今後はこうしたAI技術が組み合わされて、正答や誤答のみならず、子供の表情や発話など、学びに関わる多様な要素がデータとして収集・活用され、さらに最適なALが学校現場にも提供されるだろう。

10年以内には確実に起こるであろうこうした変化に備えて、学校や教師の側の柔軟性をどのように確保できるか。具体的に取り組んでみたいことである。

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