AI時代の学校教育と教師に求められる資質能力(4)コンピューターが関係モデルを創出

eye-catch_1024-768_matsuda_fin東京学芸大学副学長 松田 恵示

ところで、AIとICTの違いはどこだろうか。どちらも情報に関する技術のように思えるし、デジタルテクノロジーという点では同じように見える。情報処理や情報通信技術に、コンピューター科学を掛け合わせたものがICTで、さらに「深層学習(ディープラーニング)」などの人工知能技術が掛け合わされたものがAIということになろう。

前回までに触れてきた学習指導におけるAIの利活用は、従来のICT利活用による学習指導の工夫の次の段階だ。これまでが「教育の情報化」と呼ばれるのに対して、AI以降は「教育の高度情報化」と呼ばれている。情報化でさえ苦手感がある現場では、AIの動きはとてつもなく現実感に欠けるところがあろう。

最も特徴的な技術の一つである「深層学習」について、考えてみよう。例えば、これまでは教師の豊かな経験や知識・技能から、子供のさまざまな様子(友達関係、会話、表情、服装、身ぶりなど)を捉え、子供をキャッチすることで必要な支援や指導をしてきた。子供の様子を一つの「情報」と捉え、どのような支援や指導につなぐのかは、経験の蓄積や先輩教師からの学びが教師の職能として重要だったわけである。

このことを機械(コンピューター)にやらせるには、一つ一つどのような情報がどのように組み合わさったり積み重なったりすればどんな支援や指導が必要になるか、という関係のモデルを、個人の勘に頼りコンピューターに与えなければならなかった。この作業は、膨大で、教育現場では便利な支援ツールになる半面、利活用には限界が生じざるを得なかった。

「深層学習」という2012年にカナダで開発されたAI技術は、コンピューターが自ら関係のモデルを創り出すことを可能にした。熟練した教師でさえも気づかなかった、子供の様子と支援指導の新しい関係性を機械が教えてくれることが起こり得る。

AIと共に行う支援指導は、確実にその姿を変えながら、学校全体のシステムを変えてしまうかもしれない(クラス単位の授業、時間割の在り方、教科を中心とした仕組み)、と述べた理由である。このようなAIの利活用には、ビッグデータが不可欠であり、多くの良質なデータを与え、AIを育てる必要がある。そのプロセスでは、AIは間違いもする。自ら学習するAIという技術は、ある種の「確率」のようなものである。繰り返すごとに精度が上がるが、結果は事後的にしか分からない。

そもそもAIは、課題に対して最適解を見つけるには人間を上回るが、課題そのものの設定はまだできそうにない。そこには人間との協働作業が必然となり、教育現場におけるAIの利活用もしかりなのである。AIの性質を理解し、AIにできることと、AIではなく教師が行うべきことの区別を自覚し、革新的な教育イノベーションを遂行することが、これから必ず求められるようになろう。実際に触れてみて部分的にでも利用してみることが重要である。