矯正教育最前線~学校との連携を模索して(6)少年院における修学支援

eye-catch_1024-768_yokoyama_fin

監修 國學院大學名誉教授 横山實

「高等学校に戻りたい」「専門学校に進学したい」「大学で学びたい」など、非行をして少年院に送致された在院者にも、修学に関する夢や希望があります。少年院では、再び非行をさせないための矯正教育と、健全な社会生活を継続させるための社会復帰支援を行っていますが、そうした彼らのニーズは、再非行を防止するための必要性と合致すると考えています。

多摩少年院は、在院者の大半が18歳以上であり、既に中学校を卒業した者を処遇の対象としています。入院者の学歴を見ると、現在最も多いのが高校中退者で、在院者の約半分を占めています。

そうした状況の中、当院では、社会復帰支援として、在院者のニーズを拾い上げ、さまざまな形で修学を支援することに力を入れています。ただし彼らのニーズは「学校には行ってみたいけど、どんな学校があるのか?」という漠然としたものから、「○○大学の△△学部××学科に進学したい」という具体的なものまで、内容も程度もさまざまです。

少年院の社会復帰支援は、矯正教育と同様に、個々の事情や必要性に応じて実施するのが原則ですから、彼らから出されるさまざまなニーズに応じて、より適切な内容・方法で個別に行っています。

近年行った修学支援としては、専門学校や大学の入試会場まで在院者を連れて行って受験させたり、休学していた高校への復学に向けて数日間自宅に外泊させて通学させたり、通信制の高等学校のスクーリングに在院者を参加させたりした例があります。いずれも、少年院と在院者本人、保護者、高等学校の間で事前に綿密に計画して実施しました。

基礎学力を身に付けさせることは、修学の選択の幅を広げ、修学を継続させることにつながるため、基礎学力の向上にも力を入れています。義務教育を終了したとはいえ、在院者のうち一定数の者は、義務教育レベルから学ばせる必要があり、彼らに対しては、NPO法人や大学生のボランティアであるBBSの協力を得ながら、個別指導を中心に教科指導を実施しています。

当院では、このように、周囲のさまざまな理解と支援をいただきながら修学支援を行っていますが、少年院送致となった者に対する理解を、高校側から得るのが難しいと感じることも少なくありません。定時制や単位制の高校の説明会に当院の職員が参加すると、「少年院送致になれば即退学」との声が学校側から多く聞かれます。また、在院者の復学調整に当たっても、復学の許可が下りるまでに何度も説明を重ね、学校側でも何度も職員会議を開く必要があったケースもあります。

この状況を変えていくためには、少年院のことをもっと知ってもらうことが大切であると考え、当院では、都立高校の職員と相互の見学会を実施したり、教育委員会が主催する教職員研修会を当院で実施する計画を立てたりしています。

当院の高校中退者は、入学はしたものの何らかの理由で続かずに辞めてしまった者、非行をして少年院に送致され退学処分となった者などさまざまですが、中退の理由と非行の原因には何らかの共通点があることが多いと感じています。その理由・原因に関し、本人が変わらなければならないのは言うまでもありませんが、本人を取り巻く環境が変わることも大事だと考えます。今後の人生の選択肢を増やすためには学習の継続が不可欠であり、修学支援を今後も積極的に実施していきたいと考えています。
(曽和浩・多摩少年院首席専門官)