矯正教育最前線~学校との連携を模索して(8)発達障害などのある在院者への教科指導

eye-catch_1024-768_yokoyama_fin監修 國學院大學名誉教授 横山實

少年院では、障害またはその疑いのある者に対して、支援教育課程および医療措置課程というコースを設け、個々の障害特性に配慮した処遇を実施しています。支援教育課程は、知的障害、発達障害など処遇上の配慮を要する者を対象とし、医療措置課程は、身体疾患や精神疾患を有する者を対象としています。医療措置課程を有する少年院は、関東医療少年院と京都医療少年院の2庁であり、他の少年院と比べて医療体制が充実しています。

これらの少年院には、中学生から高校を卒業した者まで幅広く対象者がおり、中学生には学習指導要領に準拠した指導が行われます。学歴や年齢によるものだけでなく、少年たちの能力は多様であり、同じ中学生でも四則演算がままならない少年がいる一方で、微分積分をやすやすと解いてしまう少年もいますので、個別の対応が必要となります。

一方、個別の指導だけでなく、集団場面での関わりを前提とした教育も重要です。発達障害の少年はコミュニケーションに支障がある場合が多く、それにより不適応となり、問題行動につながることもあります。したがって、出院後の生活への適応訓練という意味でも、集団指導と個別指導のバランスを考えながら教育しています。

教科指導の実施に当たっては、教材の選定や指導方法にも配慮が必要です。外部講師の協力を得ながら、在院者の理解が深まるような教材を選定したり、在院者の特性に応じて、視覚に訴えるような補助教材を作成したりと、さまざまな工夫をしています。また、少年院に入院した在院者の多くは、成功体験が少なく、自己肯定感、自己効力感が下がっています。従って、それらを向上するために、ほめる場面を増やすなど工夫をし、学習への意欲を喚起しています。

学力の向上は、非行に関する指導の深まりに大きな役割を果たしています。例えば、国語との関連でいえば、在院者の中には語彙(ごい)が少なく、自らの気持ちを表現することが苦手な者も多いため、不快な感情を全て「ムカつく」で片付けてしまう少年もいます。そして、そのような感情をうまく整理できず、逸脱行為をしてしまう少年も少なくありません。

しかし、適切な表現力を身に付け、言葉にすることができれば、周囲から理解され、問題を解決するための援助も受けられます。「○○君に××なことをされたので、イライラします」と述べることができれば、状況を確認した上で職員が介入できるため、国語力はとても大事だと考えています。そのため職員は、在院者に対して、言葉で表現することを奨励し、適切に表現できたときは評価するようにしています。

少年院出院後の進路は多様であり、それぞれに対応した指導・支援を行う必要があります。特に、障害がある在院者については、保護観察所、市町村の福祉担当、福祉施設、病院など、さまざまな機関が関わり、支援を継続していくことが大切になります。そのため、在院中から関係機関が集まって、在院者の出院後の生活の在り方について会議を行うことがあります。学校に復学・進学する場合には、学校関係者にも参加いただくことがありますが、支援体制の整備が、少年たちの再非行を防ぐ力にもなると感じていますので、今後も協力をお願いしたいと思います。

(工藤弘人・東京矯正管区少年矯正第一課長)