AI時代の学校教育と教師に求められる資質能力(7)キーワードは「Just in Time Teaching」

eye-catch_1024-768_matsuda_fin東京学芸大学副学長 松田 恵示

「with AI」時代の「生きる力」とは、AIという新しい技術環境の世界にあって「生きることを面白くする」に関わる力である。もちろんそこには「about AI(知る)」、「for AI(使う)」という領域も、「学び」の内容として加えられる必要がある。知ること、使うこと、共に生きることは、三位一体であり、お互いがお互いを支え合い、刺激し合う関係になるからだ。

例えば、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育は、プログラミング教育でもよく知られる、AI時代の教育の代表例である。AIやIoTなど高度情報化が進むこれからの「超スマート社会」で、学術領域をつなぎ、新しい技術を活用できることが不可避であるため重視されている。

今般改定された学習指導要領においても、プログラミング学習は、小学校で算数、理科、総合的な学習の時間などの中で実施することとなり、高校では「理数探求」という、理科と数学にまたがる科目が新設された。加えて、全ての生徒が履修する「情報I」を新設し、プログラミング、ネットワーク、データベースの基礎を学ぶことを必修化している。新しい技術について深く「知ること」、そして「使うこと」が次世代の教養として求められている。

「with AI」の時代は「ビッグデータ」の時代でもある。このことから、何をデータとして大規模に収集し、どのようにそれを読み解き、どのように具体的な行動につなげていくのか、といった一連の活動に対する能力、つまり「データ・リテラシー」が必須のものになろう。

AIに関して「知ること」「使うこと」に関するこのような学びが、AIを具体的に活用する力としての、指示する、決断する、意志を持つ、選択できる、合理的で論理的な思考をする、他者と協働する力、統合する力などのコンピテンシーの育成と両輪になって進められる必要がある。

しかし、これらの学びは、「あれもこれも」ではなく、「じっくりと深く」といった学びの質に支えられるものである。つまり、学習する主体をよく理解するとともに、学習する側が「必要なときに必要な学びを支える」教師の指導が必要になることを示唆している。ここから、AI時代における新しい教師の指導の在り方を「Just in Time Teaching」というキーワードから捉えておきたい。

「必要なときに、必要なものだけを、必要なだけ」というものが、「Just in Time」という言葉である。産業界における生産方式の一つとして生まれたこの言葉は、1990年代にはアメリカの大学を中心に「自学自習の管理・指導」や「アクティブラーニング」の一つの方式として活用されてきた。

「必要なときに、必要なものだけを、必要なだけ」。このような教員の在り方が、実はAI時代の社会を開いていくための基盤になると考えている。

あなたへのお薦め

 
特集