eポートフォリオで学校が変わる(10)ポートフォリオ活用のポイント(2)

eye-catch_1024-768_morimoto_fin東京学芸大学教授 森本 康彦

引き続き、eポートフォリオ活用のポイントについて説明します。

⑥「主体性を引き出す学習目標を設定する」=旅行をするとき、人は必ず行き先とそこで何をするのかを決めます。学習も同じです。それは、学習目標(ゴール)と呼ばれています。よく「〇〇点取るぞ」「△△大学合格!」などを目にしますが、これらが単に、他者と比べてよい成績を取りたい、他者に負けたくないという遂行結果に着目した目標(遂行目標)ならばうまくいきません。点数を取ることが目的化されてしまい、暗記や攻略に走ったり、達成後に目標を見失い、燃え尽きてしまったりします。

今は「なりたい自分になる」ための目標(熟達目標)が求められています。自分自身が学習内容を理解したり、課題に熟達したりすることを目指す目標です。「~ができるようになる」など、できなかったことができるようになっていくイメージです。課題について思考し解決するプロセスやその結果、さらにその振り返りをeポートフォリオに記録し、見える化することで、学びの軌跡と成長を自覚でき、自己肯定感も育っていくのです。

⑦「学びの振り返りの習慣化」=生徒が主体的に学びを進められるようになると、自身で自問自答しながら学びを振り返ることで多くのことに気付き、理解を深め、熟達していく姿を目の当たりにします。学び方を学び、それが習慣化されたということです。夕食後に歯を磨かないと「なんか気持ち悪いなぁ」と思うのと同様に、学んだ後に振り返りをしないと「気持ち悪いなぁ」と思ったら習慣化された証拠です。

⑧「学びのアルバム化」=習慣化された頃には多くのeポートフォリオが蓄積されていることに気付きます。旅の写真はアルバムに整理すると大切な思い出が埋もれることなく、そこで得た経験もいざというときに引き出しやすくなります。eポートフォリオも切りのいいときに「これだ!」というものを精選して「学びのアルバム」にすることが大切です。これは「ショーケース・ポートフォリオ」と呼ばれ、自身で精選すること自体が総括的な振り返りの機会になるばかりでなく、入試の資料にも利用できるのです。

教育ネットワーク

⑨「教育ネットワークの構築」=eポートフォリオを継続的に活用していると、学ぶ集団(学びのコミュニティー)が学校内に自然と形成されていきます。教室では主体的・対話的で深い学びが起き、自宅では生徒の学びを教師と保護者が見守り、時には地域の人々や事業者とも連携した学びが展開されるでしょう。これらの学びはバラバラではなく、eポートフォリオが橋渡し役となり時空を越えてつながるのです。これが「教育ネットワークの構築」です(図)。チーム学校による学びはeポートフォリオによって可能になります。地域全体を学び場とした、大きなアクティブ・ラーニングが教育ネットワークです。

10回にわたり、今求められているeポートフォリオとは何かについて説明してきました。eポートフォリオを活用すること自体が学びそのものであり、継続的に蓄積されたeポートフォリオを見れば、その人の「良さ」「可能性」「進歩」までもが分かる。教育に欠かせないツールなのです。

(おわり)

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