校長のパフォーマンス(87)経営理論は学校を支えられるか

eye-catch_1024-768_takashina-performance教育創造研究センター所長 髙階玲治

『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)』誌に連載されていた入山章栄准教授(早稲田大学ビジネススクール)の『世界標準の経営理論』が5月号で終わった。入山准教授は先進的な経営理論を極めて多岐にわたって収集・分析し、紹介する気鋭の経営学者である。『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社、2015)の著書もある。その連載の最終に当たって「経営理論こそが、あなたの思考を解放する」と述べている。

実のところ、私は経営理論は企業に役立つのか、と疑問に思っていた。もしも、優れた経営理論があったとしたら、企業に倒産などはなくなるはずである。しかし、実態は名の知れた大企業でも、黒字を生み出すために悪戦苦闘している。また、中小企業や商店経営等の消長は激しいものがある。

入山准教授も絶対的な経営理論はない、という。しかし、経営学への期待は大きく、何らかの「答え」を導いてくれると人は考える。実は、そこに「答え」はなく、「この企業は何のためにあるのか」を問う行為の中での「アイデンティティ」と「ビジョン・ミッション」が重要だという。

その考えを読んで、私は大きなヒントを得たのであるが、ただ学校経営論を考えると学校教育にどの程度役立つのかは、なお疑問である。教育実践と切り離された経営理論が多いのである。しかし、それでいて経営理論は必要なのである。例えば、校長は何らかのビジョンを持って経営に当たるであろう。そのビジョンは、学校教育はこうあるべきだ、というミッションである。そのミッションを達成するために、学校の経営努力の方向を思い描く。今年はこれを重点として掲げよう、と。

ただ、多くの場合、それが理論的・形式的でありすぎた。日常の実践につながらない傾向が強かった。そこで実際の教育活動に生かすために、実践のプロセスの過程で練り直していくことが必要である。経営ビジョンが抽象のレベルで停止するのではなく、実践に溶け込んでいくように仕向けていく。入山准教授はそれをセンスメーキング理論と呼んでいる。

つまり、何らかの経営ビジョンを持つことは、航海するための羅針盤を持つことを意味していて、経営の方向が生まれるのである。ただし、学校ビジョンは必ず達成できるとは限らない。しかし、達成を目指すその過程の中で多様な活動があり、発見や修正があり、子供の成長につながることが重要なのである。

その意味で経営ビジョンをどうプロセス化するかが重要になる。ビジョンが抽象的であってもプロセスの過程で具体的な取り組みが明らかにされると、日常の実践に生きる。センスメーキングこそ重要である。

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