AI時代の学校教育と教師に求められる資質能力(9)教員に求められるAIリテラシー

eye-catch_1024-768_matsuda_fin東京学芸大学副学長 松田 恵示

併用の図には、「オーダメイド教育の提供」「家庭教師ロボットによる教育」「学習に適した状態の再現」「職人的技術の継承」「授業コンテンツの多言語配信」といった利活用のイメージに加えて、将来的には、「潜在能力を引き出す人材育成」が示されている。これは個人の総合的な情報を基に、社会のさまざまな場面で活躍する人材の特徴に合わせて、人材を配置することがイメージされている。個性に応じた職業選択を、当該の個人が「気づいていない」面も含めてサポートしようとするものである。

もちろん、こうした利活用のイメージには、前回指摘したAIという技術が持つネガティブな面が含まれる可能性があり、AIの利活用に関する「倫理」の問題を考えなければならない面は含まれている。けれども、AIが教育の姿を相当に変容させていくことは理解できるし、おそらくこの流れは止めることはできない。

経済学の用語の中に、「GPT=General Purpose Technology(汎用目的技術)」という言葉がある。これは、社会のさまざまな分野で広く適用可能な基幹的で画期的な技術のことである。第1次産業革命の時には「蒸気機関」が、第2次産業革命の時には「内燃機関と電力」が、そして第3次産業革命では「インターネットとICT」がそれに当たる。そしてAIは、まさに第4次産業革命におけるGPTであると指摘されている(『人工知能と経済の未来』井上智洋著、文春新書)。

総務省・情報通信審議会報告の今後の教育分野におけるAI利活用のイメージ

つまり、これからの社会のGPTとして、もちろん教育にも適用されるし、社会全体にも広がる技術になる可能性が高いということだ。AIが教育の姿を変容させるとともに、AI社会における教育を求められる流れが止まらない理由である。このようなGPTの登場時には、職業の構造変化が生じ、失業が広がるとともに、新しい職業への配置転換が引き起こる。「AIによって失われる職業がある」ことがよく話題となるが、自動車が発明されたことによって馬車がなくなったように、時代の変化は不可逆的なものであり、教育はむしろ次の時代を切り開く役割を担ってきた。

となると、教育の最前線にいる教員に求められるものは、AIリテラシーを高めることであり、「with AI」の理念から、主体的にAIと共生する学校現場の在り方を積極的に作り出そうとする構えであろう。「AI格差」を生じさせないための柔軟さと少しの勇気が必要な時代になっているということかもしれない。