AI時代の学校教育と教師に求められる資質能力(10)学校と企業の協働が一層重要に

eye-catch_1024-768_matsuda_fin東京学芸大学副学長 松田 恵示

本連載では10回にわたって、AIは教育をどう変えるのか、また教師である私たちは何を捉え、どのような対応が必要になるのかを考えてきた。

最後に、今まで取り上げることができなかった、今後の社会における学校と企業との連携や協働の重要性についても少し触れておきたい。

AIが第4次産業革命におけるGPT=General Purpose Technology(汎用目的技術)だと指摘されていることは前回述べた。社会のさまざまな分野で広く適用可能な、基幹的・画期的な技術であるGPTは、それをうまく取り込み先導する国(ヘゲモニー国家)と、後追いする国との間に経済的な格差を生むことが知られている。第1次産業革命時の蒸気機関の場合は英国が、第3次産業革命時のインターネットの場合は米国がヘゲモニー国家だったようにである。

日本総研の北野健太副主任研究員のリポート「ユーザー企業が主導するAI利活用促進に向けて」では、AIの構成要素は(1)データ(2)マシンパワー(ハードウエア)(3)アルゴリズム(ソフトウエア)――の三つから成るが、(2)と(3)では、米国や中国の巨大IT企業が先行しているとする。

しかし、AIを生かす事業では、具体的な活用場面の良質な(1)の存在と、アルゴリズムをカスタマイズする「パラメータ」を作ることがその成否を握るとし、(1)や(3)を有する巨大企業も積極的にユーザー企業と連携を進め、ユーザー企業も強みを生かしたAIの利活用を探っていると示唆する。

現在、教育産業界のユーザー企業において、AI技術の利活用を進めるため、教育に関わるさまざま場面で、AIの利活用を先導するミドル人材の需要が高まっている。

AIを生かす事業では、具体的活用場面での良質なデータの存在がその成否を担う。しかし、AI生成物の評価や利活用で生じる新たな問題の解決や改善(ソリューション)を含め、教育の高度な専門性人材がいなければ、ユーザー企業として、差別化要素に関するデータの担保と活用はできない。

「社会に開かれた教育課程」という方針の下、学校改革が志向される中で、学校教育へのAI技術の導入も数多く行われ、学校と教育産業の協業場面も拡大している。

例えば反転学習のように、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)を促進するため、家庭と社会教育との連携を企業と学校が協働して具体化する取り組みが注目される。学校側もコンピテンシーの育成を目指しながら、教員の働き方改革を進める必要があって、「学校との連携・協働」に関心がある教育関連企業との関係づくりが進んでいる。

AIの利活用では、さまざまな側面から産学協働が進むと予想されている。教員の側から積極的にチームを組み子供の指導に当たったり、協働して教育を行ったりする能力・資質が一層問われることになろう。

(おわり)