複雑化する学校トラブル スクールロイヤーの役割(3)いじめ防止対策推進法の現場への理解

スクールロイヤーの活動の一つとして、しばしば依頼されるのが教員向けの研修である。とりわけ、「いじめ防止対策推進法に基づき学校がやらなければならないこと」を校長会、教頭会、指導主事の研究会、時には学校で全教員に向けて伝えてほしいというニーズがある。

同法が施行されてすでに5年ほど経過した。ところが、研修に赴いて強く感じるのは、意外にも、「同法を的確に理解していない管理職や教員が少なくない」ことである。

同法では、学校には基本方針の策定義務のみならず、道徳教育の充実や相談体制の整備などが求められる。いじめ防止のための組織の設置も義務付けられている。いずれの学校も基本方針や組織の設置などは形として実施している。

ところが、同法で最も重要な措置の一つである「個別のいじめに対して学校が講ずべき措置」(23条)の内容や実現方法が、教員に正確に理解されておらず、適切に実行されていないケースがある。

例えば、学級経営に一定の自信があるベテラン教員ほど同法を意に介していないこともある。校長などの管理職が「研修で初めて知った」と述べるケースもあり、本当の意味で周知が進んでいないと感じることがある。

各教員の個別のスキルアップはもちろんのこと、いじめの防止に対しては、学校、学年全体で組織的対応をする重要性は例を挙げるまでもない。この点、22条では、学校内にいじめ防止の対策組織を置くことが義務付けられ、教頭、学年主任やSCなどで構成された組織づくりまではどこの学校もやっている。

しかし、組織づくりで終わっている場合が多くないだろうか。定期的に公式会議を開く必要を主張しているのではない。いじめへの組織的対応の一歩は、常に法律を意識しつつも、「気軽に情報共有」することにある。

例えば、職員室の雑談や教員同士の立ち話も、同法で定めるいじめ防止のための組織的対応の一環と言うこともできる。校長や教頭といった管理職が、常にアンテナを張って気軽に相談できる雰囲気をつくることも、各教員が抱え込む問題を防止し、いじめの早期発見につながる措置である。

現場で各教員が熱意を持って行っているソフトな対応を法律の枠組みに置き換えて理解できるよう説明すること、これもスクールロイヤーの役割の一つと考えている。

(弁護士 渡邊徹)