複雑化する学校トラブル スクールロイヤーの役割(5)対教師暴力時の対応を考える

対教師暴力を振るった生徒に対する被害届を出すべきかどうか――。スクールロイヤーの下には、時にそんな相談も入り込む。通り一遍の法的アドバイスだけすれば、「被害を受けた教員が決めることができる」の言葉にとどまるであろう。

スクールロイヤーとして相談を聞く際、取っかかりになるのは、当該生徒がどうして暴力行為に及んだのか、動機を含めた背景や事情を探ることだ。

教員とカンファレンスの場も持ち、当該生徒のこれまでの学校生活の様子、友人関係、家族構成や家庭環境などを聴取する。特に注目するのは、生徒の行動に変化が起こった時だ。行動の変化には必ず原因があるという視点で、学校や家庭で生徒に大きな心理的負荷のかかる環境的変化がなかったか、見立て(アセスメント)をする。

このような情報収集と分析の見立てをした上で、教員と一緒に生徒への被害届を出すことの教育的効果を検討する。スクールロイヤーは、その前提として、少年事件の手続きを説明したり、鑑別所での過ごし方などを紹介したりもする。当該事件における処分見込みをアドバイスし、今後の学校の対応を具体的に計画(プランニング)する。

保護観察になって学校に戻ることが見込まれる場合には、観護措置期間中、生徒のもとに誰が何回面談に行くか、その時どのような働き掛けをするか、家庭とどう連携していくかなど、大まかな方針を確認する。

付添人弁護士との付き合い方についても、基本的には、積極的に連携し、役割分担することを勧めている。生徒の意見も取り入れながら、学校としての受け入れ体制を構築する。それを当該生徒に示して、学校生活での枠組み設定をする。

鑑別所の生活は、生徒にとって普段の人間関係を離れ、規則正しい生活をし、自分を振り返ることができる特別な時間になる。そこに教師や家族が面会に来てくれることは、生徒にとって愛情を確認する機会となる。

生徒は励ましを受けながら、本気で自分を変えようと決意を語ることが多い。生徒の変化を感じ取ることは、問題行動に手を焼き、八方ふさがりの心境だった教員にとっても気持ちを新たにする機会となる。

もちろん、予想にたがわず、生徒のその後が計画通りにいくことは少ない。だだ、トライアンドエラーを繰り返して生徒も教員も成長する過程を目の当たりにすると、教育現場の底力を実感する。

(弁護士 加藤慶子)