PDCAサイクルは回っているか? 忙しくするだけの改革から新時代の改革へ(10)マネジメントサイクルは回っているか その10

元東京都立西高等学校長 石井杉生

シリーズの最後である今回は、A(改善)の段階の課題と併せて、PDCA全体の課題を述べてみたい。まず、A(改善)の課題について、前回のC(検証)と密接に関係しているが厳密な検証が行われていないため、改善策が有効だとは限らない。

教育の検証はなかなか難しい。良かれと思ってやることが必ずしも生徒に受け入れられるとは限らないからだ。子供たちの成長は予想できないことが多い。だからといって、マネジメントサイクルを避けて通ることはできないし、無視するわけにもいかない。

こう考えたとき、私の出した結論は「限定して使う」ということである。具体的には、ある取り組みが不足していると感じた場合、新たな試みを企画するわけだが、その際に「この計画を実施した場合、生徒の変容はどうなるのか、C(検証)する数値がどのように変化するか」を予測できて初めて実施に踏み出す、ということである。

逆に、検証できない取り組みはやっても時間と労力の無駄と考えることにした。そう考えないと、取り組みが次第に増えていき、ますます学校は忙しくなってしまう。

最後に、このマネジメントサイクル全体の課題だが、忙しさが最大の課題だと思う。校長ならば、昨年度のP(計画)より少なくすることは心情的に難しい。教育委員会も「本年度は何をするのか」と聞いてくる。そうすると、昨年度のP(計画)より増えることになる。

なぜ増えるかについての十分な説明もなく、教職員の納得も得られないまま、実行される取り組みが成果を上げるとは考え難い。しかし、十分な検証ができないために、取り組みをしない方が良いとも言えない。

頑張っている人がいると「やめよう」とは言いにくいのが学校である。そうすると言い出した校長がいる間は取り組みが続くことになる。そして、校長が異動すると取り組みは静かに終わっていく。

昔は「校長が代わると学校が変わる」といわれたが、現在は「校長が代わると学校が戻る」状況になっている。ダイエットではなく、リバウンドである。

これはマネジメントサイクルそのものが悪いわけではない。十分な理解、人と時間、エネルギー、検証、分析がないまま始めてしまったマネジメントサイクルの運用面での失敗である。うまく運用すれば有効であるマネジメントサイクルを、心して使ってもらいたいと思う。

(おわり)

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