学びがリンクし深化する―遠隔合同授業の可能性―(2)100PJからの遠隔合同授業

 日本で最初にテレビ会議システム(CU-SeeMe)を利用した遠隔合同授業が行われたのは、1995年9月22日のことである。

小規模校の長野県美麻村立美麻小学校と茨城県つくば市立桜南小学校の4年生が、社会科の授業で互いの地域の自然や産業について紹介し合った。

合計2回の授業を計画。2回目は両校が参加していた「100校プロジェクト校(ネットワーク利用環境提供事業)」の公開研究会に位置付けていた。美麻小は約20人、桜南小は600人を超える参観者があった。

1回目の授業は、桜南小の児童が茨城県の自然について発表した。「茨城県には筑波山があります。標高は876メートルです」という言葉に、聞き役の美麻小児童の何人かが、持っていた地図帳を開き始めた。

関東平野を調べるのかと注視すると長野県のページを開き、山の高さを調べ始めた。自分たちの学校の標高は952メートルである。筑波山の頂上より高いではないか。この驚きが、美麻小の児童に長野県の山の標高を調べさせ、もっと高い山があることを伝えたいという気持ちにさせたのである。しかし、1回目の授業は時間切れで、そこで終了してしまった。

10月に2回目の遠隔合同授業を行った。桜南小の児童が「今日は茨城県の産業について発表します。いいですか」と告げると、美麻小の児童はそれをさえぎった。「ちょっと待ってください。長野県の山の高さを発表したいと思います。いいですか」と述べた。

指導案にない想定外の発言に教師は一瞬ためらった。しかし、桜南小の児童の「どうぞ」の声で、予定とは異なる授業展開になった。

授業終盤では、互いに持参した名産の食べ物をテレビ会議システムに映し出し「これは何でしょう」とクイズを出し合った。茨城県からは「れんこん」、長野県からは「おやき」が出題された。画面上ではどちらも同じに見えたが、割ってみると、両者の違いは明白だった。「おいしそうですね」という桜南小の反応に、「はい。おいしいです」と美麻小の児童は実際におやきをほおばってみせた。

相手の地域を知ったことから、自分たちの地域をもっと知りたい、相手にも知らせたいという主体的な気持ちが児童たちに生まれた。児童は、画面越しに食べ物をほおばり、おいしそうな表情を見せることが最適な伝え方だと瞬時に判断し実行したのだ。そんな児童の姿から遠隔合同授業への大きな期待が寄せられたのである。

遠隔合同授業は、初の試みから、テレビ会議システムを使った単なるイベントではなく、教科の指導計画にのっとった正規の授業として位置付けられている。他の方法では得られない教育効果をもたらすと期待して計画されたものだった。この点を忘れてはならない。

(東原義訓・信州大学教授)