クオリティ・スクールを目指す(131)読解力の低さにみられる課題

eye-catch_1024-768_takashina-school教育創造研究センター所長 髙階玲治

AIではできない力の獲得を

将来においてAI(人工知能)が格段に進化することは確かであるが、その結果として人間が職を奪われるのではないか、と心配する声が大きい。すでに将来、AIにとって代わられる仕事、代わらない仕事などが予測されている。恐らくは近未来において徐々に転換が起きるであろう。

それに対して学校教育は子供の将来的な資質・能力をどう身につけるか、が問われることになる。いわば、AIにはできない「力」を身につけることが重要になる。

ところで新井紀子教授(国立情報学研究所)の調査によれば中・高校生などで極めて「読解」が低いという深刻な実態がみられるという(『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社、2018)。なお、新井教授といえば、「東ロボ君」で有名である。

この問題はすでに雑誌等で断片的に知っていたが、改めて著書を読んでその深刻さに驚きを禁じ得なかった。例えば、メジャーリーグでドミニカの選手の割合を図で示す問題があって、簡単な説明文によってどの図が正解かを問うているが、中学生の正解率は12%、高校生28%であった。説明文の数字を読めば、正解は簡単に見いだせるはずであるが、数字の示している意味が把握できていないとしか考えられない。

このような出題例をあれこれ提示して、その正解率などを示しているが、結果は悲惨なものである。

結論を言えば、生徒の回答率の高いものは、ごく表面的なもので、そうした知識的なものはAIの得意とするものであるから、簡単にとって代わられるという。

例えば、平均の問題があって、数値から答えを導きだすのに「平均」の意味がわかっていないという。実は、AIも「平均」の意味がわかって計算しているわけではない。どんなに囲碁が強くなっても「囲碁」の持つ多様な意味や背景をわかっているのではない。

しかし、意味がわからなくとも計算する能力は人間をはるかに超える。そうであれば、人間はAIにはできない能力を積極的に身につけるしかない。ただ、実態は教科書のレベルすらまともに読めない生徒が多いということである。「読解力」はどうすれば身につくのか。これまでのわが国の教育はAIに代替される程度の教育しかしていなかったのではないか。

新井教授の提言が重要なのは、新しい時代に向けて何が最も重視すべき課題であるかを具体的に示唆していることである。また、AIの持つ、できること、できないこと、についての説明も詳しい。

間もなく到来するであろうAI時代に向けて、子供の資質・能力の形成はどうあるべきか、教師それぞれが深く考える時期を迎えている。