これからの医療的ケア ―実態と課題から捉える (3)学校における医療的ケアの歴史②

東京都立光明学園統括校長 田村 康二朗

医療的ケアを巡る歴史の第2回目では、教職員が医療的ケアの担い手に加わる過程を述べる。

■違法性阻却(そきゃく)の時代~東京都の救急体制整備事業を例に

医療的ケアが必要な子供の受け入れは、現状で保護者の負担も大きい。そのため、学校(教員)とPTA(保護者)、文科省、都道府県教委の関係者が知恵を出し合って打開策を探った。

例えば、東京都の検討委員会で考え出された制度が「救急体制整備事業」だった。それは保護者の負担を軽減するため、特定の対象児の特定の医療的ケアで認定を受けた特定の教員(教員の同意が前提)が、学校が委嘱する医療的ケアに関する指導医の下、保護者の協力を得ながら研さんするもの。保護者に代わって医療的ケアができるようにした仕組みだった。

この仕組みは、万が一にも事故が起こらないようにするため、20項目程度の一定の条件を課して安心・安全を担保したものでもあった。法令上は、資格を有する医療職しかできない行為だが、国は命を守るために、保護者に代わって別の者が関わることは、明確な違法状態とは言えず、やむを得ない(専門用語では「違法性阻却」という)との見解を示した。

保護者が医療的ケアを緊急的にできなくなったときは、事前申請する必要があるなど、日々の手続きが煩雑だった。保護者に代わり教職員が医療的ケア行為を担う実績が各校で積み上げられていった。

この頃問われていた視点は、学校で教員が行う医療的ケアの教育上の意義だった。医療的ケアは実施するのが目的ではなく、学習目標を達成するために行うもの。教育活動を行う上で、児童生徒が安心して学習に向かえるようにする、健康面での基盤整備の支援の一つとして共通理解されていった。

■外部専門家活用の時代~「東京都特別支援教育推進計画」を例に

医療的ケアの法的整備

21世紀に入り、各自治体が特別支援教育を大きく前進させようとする動きがあった。学校教職員、保護者団体、障害者団体、専門家らを交え、2年がかりで諸課題の改善充実を検討した。東京都も、検討の場で保護者の委員から強く意見表明された「専門人材の学校現場への導入」が、2004年に公表した「東京都特別支援教育推進計画」に盛り込まれ、順次実施された。

医療的ケアの具体的施策では、専門人材として各肢体校に非常勤看護師を配置できるようにした。医療的ケアの大部分を保護者に代わって看護師が行えるようになり、保護者の恒常的な待機が大幅に減少していった。

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