校長のパフォーマンス(90)AI時代と教職志望

eye-catch_1024-768_takashina-performance教育創造研究センター所長 髙階玲治

来年度に向けた教職採用試験が始まっているが、志願者数がかなり減少している。東京都の場合、小学校は昨年の3.6倍から2.7倍になった。他の県では2倍以下もみられるのではないか。全国的な傾向として小学校の志望者の減少傾向が続いているが、中・高校もかなり減少しはじめている。

その背景には、学校の働き方改革で急激に問題になっている長時間勤務の実態がある。特に小学校は全教科担任のような過重な職務が求められるだけでなく、英語指導、ICTやプログラミング学習の導入がある。多様化・困難度の多い仕事などが増える中で、教師の余裕のなさが教職への希望をちゅうちょさせる要因になっているのではないか。抜本的な改善が早急に必要である。

一方、周知のように最近は景気の動向などを受けて、仕事を選択する可能性がかなり高まっている。若者の職業意識がかつてとはかなり異なるという。

例えば、アメリカでは20~30代のミレニアム世代が増加しているが、会社を簡単に変える、自分のやりたい職務にこだわる、フレキシブルな勤務を望む、などの仕事意識が濃厚だという。わが国もそうした働き手の意識が変わる兆候がみえる。

ところで文科省は「Society 5.0に向けた人材育成」を発表しているが、その中で「小学校教員採用試験の倍率の低迷」を危惧している。現状から考えると、かなり心配である。しかし、AI(人工知能)時代に入れば、教職希望者は減るであろうか。私の勝手な未来予想であるが、かえって増加するのでは、と考えている。

AI時代には多くの職業が減少する一方、残る職業も当然ある。AIではできない人間的な触れあいを必要とする職業である。そこでAI時代に残る職業をみると、レクリエーション療法士、危機管理責任者、医療ソーシャルワーカーなどが真っ先にあがってくる。

教師も残る職業に入る。学校にも多くの教育機器による学習プログラムが導入されることは確かだが、子供の成長に直接多様に関わる人間的な対応はできない。むしろ、教師の役割こそ重視される。教師の仕事は学力形成のみでなく、人間的な成長への関わりを個々の子供に行うことである。

教師という職務は、他の職業とは異なって、ある問題が出現したときにその場の解決のために要請されるのではなく、毎日の学校生活を共にしながら、子供個々の成長に関わるという魅力がある。AI時代に数少ない人間的な職業になるのではないか。

つまり、AI時代に残る仕事の中でも、仕事としての魅力があるかどうかでその職業選択が大きく変わる。教師という職業の魅力は衰えないであろう。ただ、多忙化解消が前提であって、早急に必要とする政策である。

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