肢体不自由生徒の観点から見る~高校の特別支援教育(5)医療的ケアの充実を目指す

横浜国立大学教育学部博士・高野陽介

障害者権利条約の批准や障害者差別解消法の施行によりインクルーシブ教育への理解も高まり、以前より重度な肢体不自由生徒が高校に進学するケースも増えている。

それに伴い、生活面で大きな課題になるのが「医療的ケアの充実」である。医療的ケアとは、一般的に学校や在宅などで日常的に行われている、たんの吸引、経管栄養、気管切開部の衛生管理などの医行為を指す。

小・中学校などでの医療的ケアは、原則として看護師などを配置、活用しながら、主に看護師などが医療的ケアに当たり、教員がバックアップする体制が望ましいとされている。しかし、高校に在籍する医療的ケアが必要な肢体不自由生徒のサポート体制はまだまだ十分ではない。

文科省の2016年度「特別支援学校等の医療的ケアに関する調査結果について」では、公立小・中学校は調査対象になっているものの高校は含まれておらず、高校の実態はこれまで把握されてこなかった。

筆者が全国の高校に質問紙調査を実施した結果からは、16年5月1日時点の回答校1536校に在籍する肢体不自由生徒280人のうち、5人に1人に当たる55人は医療的ケアが必要なことが明らかになった。

特に、肢体不自由生徒の多くが導尿のケアを必要としている。その他、呼吸器の使用に伴うたん吸引、摘便、洗腸が必要な生徒も少数だが高校に在籍していた。

導尿などのケアを自分で行える生徒もいるが、他者の介助が必要な生徒も多い。このような場合、実際の高校現場で医療的ケアを誰が担うかに課題がある。必要に迫られ看護師を募集しても応募がないことも多い。そのため、保護者が一時的に学校に付き添い、対応せざるを得ない場合も多い。

「導尿やたん吸引のため、いったん仕事を抜けて対応しなければいけないのは本当にきつい。誰かが代わってくれたらいいが、そう簡単にはいかない」。子供を学校に通わせ続けるための負担の声が保護者から聞かれる。その他にも、医療的ケアを行うスペースや対応の時間を十分に確保することの難しさなど、さまざまな問題が指摘されている。

今後、重度の肢体不自由生徒の高校進学も見据え、地域の医療機関や特別支援学校との連携が必要だ。高校の医療的ケアの体制整備として、看護師配置を工夫したり、学校教職員の研修の充実を進めたりすることが急務だと考える。