肢体不自由生徒の観点から見る~高校の特別支援教育(8)私立高校の体制整備

横浜国立大学教育学部博士・高野陽介

肢体不自由の生徒が生活する地域で高校進学の選択肢を増やすためには、公立だけではなく、私立の高校を含めた体制整備が求められる。

文科省の2016年度の特別支援教育の体制整備状況では、私立高校でも特別支援教育コーディネーターや個別の指導計画、教育支援計画の作成が着実に行われてきているものの、国立や公立に比べて全調査項目で実施率が低い状況が明らかになっている。

私立高校への進学を希望する肢体不自由生徒は多いが、十分な対応が行われず入学が実現しないケースもみられる。

全国の高校に調査したところ、回答があった私立高校から肢体不自由の生徒の入学に対するさまざまな意見が挙がった。

例えば、「肢体不自由の生徒の受け入れは、公立にお願いしたい。そのための公立だと思っている。私立に手厚い対応を望まれても財政的に苦しい」といった意見や、「私学には限界がある。本校は車いすでも自分で生活できるレベルの生徒は受け入れている。エレベーターや障害者用トイレなどの施設はあるが、登下校やトイレは保護者にお願いしている」といった声が寄せられ、例外なしに入学を認めていない学校や、生活動作の自立を条件に入学させるケースもあった。

中には「私立高校は、合理的配慮の提供が努力義務になっているが、公私立に関係なく必須だと思う。ただ、設備や予算的な関係で私立は対応が難しい場合がある。国の方でサポートしてもらえる体制があるとありがたい」といった意見もある。特別支援教育の必要性を理解し、入学を認める方向で考えるが、そのために私立高校への行政のサポートが必要との意見も出ている。

各都道府県と政令指定都市の66教委(相模原市を除く)に実施した調査でも、回答があった53教委のうち半数が「私立高校は十分に把握していない」との回答を調査用紙に記していた。

教員研修や巡回相談、特別支援学校のセンター的機能の活用といった取り組みにおいても、私立高校を対象にした教委は半数以下である。実態把握を含めて私立高校と教委との連携が今後ますます求められる。
私立高校では、特別支援教育を推進する経費が国や自治体から支給されておらず、多くが各校の自助努力に任されている。

特別支援教育とティーム・ティーチングなどの体制整備には、行政支援が不可欠である。公私立を問わず、全ての高校で特別支援教育を推進し、障害のある生徒の進学の選択肢を広げていくのが望ましい。

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