ダークペダゴジー ― 教師をむしばむ負の指導法(1)ダークペダゴジーとは

東京電機大学助教 山本 宏樹

福井県の中学校で昨年3月に起こった男子中学生の自死事件は社会に衝撃を与えた。事件を調査した第三者委員会は、担任教師が自死した生徒に対して、周囲の生徒が身震いするほどの罵声を浴びせるなどの指導をしていた事実を明らかにした。そうした担任や副担任の長期にわたる「行き過ぎた指導」を自死の原因として認定した。

昨年9月には、大阪府の公立高校に通う女子生徒が、生まれつき茶色の髪を黒く染めるよう何度も強要されたことで精神的苦痛を受けたとして、府を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。新聞報道によると、文化祭や修学旅行への参加を認めないなど、4日に1度の頻度で指導を受けたことで女子生徒は過呼吸を起こすようになり、不登校を余儀なくされたという。

最近では、日本大学アメリカンフットボール部の選手が「相手チームの選手をつぶせ」と言う監督とコーチの指示に従い、相手選手に危険なタックルを仕掛けて負傷させた事件が大きな問題になった。

加害選手が謝罪会見で語った内容によれば、当該選手は試合や練習への参加を禁じられたばかりか、日本代表チームへの参加を辞退するよう命じられるなど、選手生命を脅かされる指導を受けたことで精神的に追い詰められ、加害指示を拒否できなかったとのことである。

これらの事件に共通しているのは、不適切な教育目標を達成するために、教師や指導者によって過酷な指導方法が用いられたという点である。この種の問題を考える際の有効な概念として「ダークペダゴジー」が挙げられる。

ダークペダゴジーは、他者の成長や価値観、知識獲得に介入するための後ろ暗い方法論を指すもので、ドイツの評論家K・ルチュキーによって1977年に命名された。具体的には、▽暴力▽強制▽うそ・ごまかし▽賞罰▽欲求充足の禁止▽条件付き愛情▽心理操作▽監視▽無視▽屈辱――などを用いたしつけや指導が当たる。

倫理的問題をはらむダークペダゴジーだが、いたずらに問題化されることへの懸念を抱く読者もいるだろう。教育現場からは強制や管理に頼らざるを得ないという苦悩の声が聞かれる。指導方法の問題性だけに注目が集まることで、教師たちがリスクの高い指導を手控え、子供同士のいじめや非行を放置することにつながるのではないかと危惧を持つ人もいるだろう。「子供には叱られる権利がある」という意見もある。いずれも傾聴すべき意見である。

私たちはダークペダゴジーにどのように向き合えばよいのか。全12回の連載を踏まえ、この問いについて考えたい。