イエナプラン ―インクルーシブな学びの実現―(3) 違いの豊かさ学びに生かす

日本イエナプラン教育協会特別顧問 リヒテルズ 直子

イエナプランの「20の原則」では、まず、人は皆「ユニークで、かけがえのない価値を持つもの」と捉えている。つまり、イエナプラン教育の出発点は、子ども一人一人が異なる存在であるとの認識だ。伝統的な学校で行われてきた画一一斉授業と同じ年齢の子どもは「同じ」ことができるはずと「同質的な集団」として捉える考え方には、真っ向から対立する。

イエナプラン校では、通常、低学年(4~6歳)、中学年(6~9歳)、高学年(9~12歳)でグループ(クラス)を構成する。2~3年の年齢幅がある集団でクラスを作るのだ。イエナプラン創始者のペーターセンは、異年齢学級をドイツなどで伝統的にあった徒弟制の職業集団に模した。子どもたちは、まず「弟子」の立場でグループに入り、「熟練工」に成長し、「マスター」になると見なした。

子どもたちは、実際、2~3年間を一つの教室で過ごす。最初は、年長者から助けられ教えられる立場、2年目はリーダーと初心者の中間の立場、3年目には年少者を助け、教え、グループ全体をリーダーとして率いる立場になる。

イエナプランの異年齢グループのイメージ

オランダでは8年間になる小学校の間に、こうした経験を2~3回経験する。それにより、子どもたちは助け、助けられる立場の両方を経験する。それは、実社会に出る準備だともいえる。実社会では、現に同年齢集団の組織はほとんど存在しない。

異年齢学級を持つ学校では、小学校の在学中に「できる子」や「できない子」の関係がずっと続くことはない。どんな子にも得意と不得意がある。どんな子でも、人から何か教えてもらったり、自分の得意なことで人を助けたりすることができるからだ。実際、算数や国語が不得意な子でも、年長の立場になれば、年少の子どもを助けることができる。こうした経験は自尊感情を育む上でとても重要だ。

異年齢学級では、助け合いや協働の機会が増える。教員に頼らなくても、子どもたちだけで解決できる問題も増える。つまり、子どもたちだけで自治的にグループを運営できるようになる。

クラスの担任教員をイエナプランでは「先生」と呼ばず、「グループリーダー」と呼ぶ。グループリーダーは、生徒たちと同様、グループの一員として行動する。加えて、グループの成員一人一人が快適に過ごせる場を用意する責任も持つ。

グループリーダーは、従来の「教師」のような権威的な存在ではない。生徒たちの学びや生徒同士の相互作用を潤滑にするファシリテーターとしての役割を担っている。