クオリティ・スクールを目指す(137)人と人との距離感を磨く

eye-catch_1024-768_takashina-school教育創造研究センター所長 髙階玲治

「友だち幻想」という知恵と作法

2017年度の学校におけるいじめ調査が発表されたが、驚くべきことに16年度に比べて28%も増加して最多の41万件という。「いじめ大国日本」という印象である。

しかし、調査結果は毎年発表されるが、どのような教育が必要か、ほとんど示されない。「いじめゼロ」を目指して努力している学校があっても、文科省は「見逃している可能性があり懸念される」という。

子供は「いじめ」などにどう対処すべきか、その知恵や行動を学べないのでは、今のみでなく将来も暗いであろう。

そのようなことを考えていたら菅野仁教授の『友だち幻想』(ちくまプリマー新書2008)に出会った。最近、評判の本である。

菅野教授は、日本の高校生の国際比較調査をみると、米国、中国、韓国などが将来「偉くなりたい」「自分を磨きたい」が多いのに比べて、「一生付き合える友人を持ちたい」などの「友人重視志向」の傾向が突出して高いという。それでいて現実には、いじめや引きこもりなど、友達を巡る悩みや問題を抱えている。そうした傾向が最近増えているのではないか、と。

教授は、友達は大事だが、誰とでも仲良くと考えるのは幻想にすぎない。むしろ、誰とでも仲良くなることを強制されることで、友達が強迫になると述べる。

例えば、「1年生になったら、ともだち何人できるかな」の歌は、友達をたくさんつくろう、みんなと仲良くできるはず、という考えが強調されていて、誰もがそう考えているが、それは「同質的共同性」の原点で、無理をすると友達をつくれない自分に傷つくという。

友達でもそれぞれ固有の存在なのだから、人によって適切な距離を置いて付き合う、そんな対処の仕方を身に付けるべきである。

だが、どうすればよいか。教授は、「ルール感覚」と「フィーリング共有関係」を分けて考えようと提案する。共同体は「ともだち百人できるかな」というようなフィーリング共有関係があって、みんなで同じように頑張ろうとする共同意識が必要だが、そこに一定の最小のルールを設定して個人の立場を守る。同調圧力を弱めて個々が持ち分を発揮できる環境への移行である。

ただ、個々の子供が「友だち幻想」を超えて、人によって異なる距離感を持ち、生きるための知恵と作法を身に付けるのは容易であろうか。個の行動や発想が少し外れれば、いじめや仲間外れにされる、という環境を超えるための対処法を学校や親が教える必要があるのではないか。

中高校生向けに書かれた本とされているが、何よりも教師や親、教育関係者が読んで、最近の子供を包んでいる環境を変えながら、子供個々に生きる知恵と作法を身に付けることを指導することが喫緊に必要であると考える。