イエナプラン ―インクルーシブな学びの実現―(9)内発的な問いを育む

日本イエナプラン教育協会特別顧問 リヒテルズ 直子

「ワールドオリエンテーション(WO)」は、イエナプランのハートといわれ、学校活動の中心的な位置にある。いわゆる「総合的な学習」のことだが、よく誤解される理科と社会科の折衷という考えにイエナプラン教育者たちは強く反対する。

WOは、学校やグループ全体で一定期間にわたって実行する。時には個人のプロジェクトとして「テーマ」を定めて進める。学校で学ぶ全ての教科に関連付けられ、グループワークで協働の仕方や企画力、起業精神、コミュニケーション能力などのスキルを学ぶ。自分自身の内発的な問いの下、答えを探求し証明する「科学のプロセス」を学ぶ時間でもある。

WOはイエナプラン創始者のペーターセンがグループワークと言っていたものを、オランダのイエナプラン教育者が体系付けた。今ではオランダ政府が定めた「中核目標」に「自分自身と世界に対するオリエンテーション」と記され採用されている。

特に、クリス・ヤンセンという初期のイエナプラン教育者が作った「ヤンセンの自転車」というWOのプロセスは有名だ。

それは、自転車のパーツに基づいて学びを7段階に分けた。前輪部は▽子どもの関心を刺激し動機付ける▽子どもの問いを集める▽探求作業を分担し計画させる――。ペダル部分は探求作業を通して報告の準備をさせる。後輪部はプレゼンテーションをする。荷台部分は成果を記録に残す。ハンドル部は「中核目標」に照らして次の探求を方向付ける、となっている。

ヤンセンの自転車

探求作業は、子どもたちが個人と小グループの分担で実行する。午前中はブロックアワーで個別に進める。午後は小グループで観察、実験、インタビューなどをしながら進めていく。

WOの意義は大きく二つある。一つは、子どもたちが身の回りの本物の事物や出来事に敏感になり、内発的な「問い」を持つようになる点だ。

知識伝達型の学びを進める伝統的な学校は、教師が答えのある問いを生徒に教え、確認してきた。これからの時代は「知らない、分からない」ことに果敢に取り組む人間が必要だ。子どもたちは、自分の無知を恐れず、世の中の事象について果敢に問い掛け、探求する姿勢を学ばなければならない。

もう一つは、役割を分担して進める個別の作業が、全体で大きな成果を生み、共同財産になる経験を持つ点だ。

成果をより良いものにするには、相互に問い直し、探求方法を振り返ることが不可欠だ。情報源を本やネット情報などの二次資料ではなく、可能な限り実験、観察、専門家のインタビューに求める。そのことで、情報の信頼性を問う批判精神が育つ。テーマ設定や知識の問題ではなく、この振り返りのプロセスを経験することが目的なのだ。