イエナプラン ―インクルーシブな学びの実現―(10)生と学びの共同体を築く

日本イエナプラン教育協会特別顧問 リヒテルズ 直子

より良い社会の一員になれるよう子どもたちを育てる――。イエナプランは、この目標に向けて連載第2回で挙げた「20の原則」を実践している。この原則には、イエナプランが理想とする人間像、社会像、学校像が反映されている。異なった他者の価値を認め、誰をも排除しない社会の在り方だ。地球上の自然の恵みと数々の文化遺産を、未来に向けて大切に継承する社会づくりの観点がある。

イエナプランは、学校を「生と学びの共同体」と呼ぶ。学校を現実の社会を映し出す鏡として、心身障害や異なる文化的背景・社会階層の子どもたちを積極的に受け入れてきた。これは、オランダでイエナプラン教育を広めたフロイデンタールが、1960年代に自らまとめた「8つのミニマム条件」で、インクルーシブな学校という考え方を提示したことにも表れている。

インクルーシブとは、障害者に限らず、社会の全ての人が自分らしい個性を尊重されて生きられる社会を目指す態度だ。

イエナプラン校の教師は、授業で何をどう教えるかだけでなく、子どもたちに対して「自分はどうあるべきか」を強く意識して学びに関わる。学校を、子どもたちの生き生きした学びの機会にする「生活の場」と捉える。教員や保護者たちは、より良い社会人として、どんな態度でいるべきかを学校の中で常に振り返る。

教員は保護者の意見をオープンに聞き、受け止める。ただ、これは保護者とイエナプラン教育のビジョンを共有していることが前提だ。言い換えれば、教員と保護者は「20の原則」の教育ビジョンを共有しているのだ。両者は、ビジョンに少しでも近づけるよう、積極的な話し合いを重ねる。

イエナプラン校には子どもの自治組織がある。高学年だけでなく、4~5歳の低学年グループからも代表が参加する。自治組織は学校で起きる問題を子どもたちで話し合い、ルールを決める。年齢差を設けず、皆が平等に参加する方法は、老若男女全ての市民が平等に参加する理想の市民社会の実現にほかならない。

保護者も学校づくりに積極的に関わる(Copyright: Noriko MORISAWA)

保護者に学校教育への参加を促すため、学校はいくつもの選択肢を提供する。例えば、図書の整理、教室内の飾り付けや家具・道具類の制作、催しのステージ準備や衣装作りなどだ。料理指導、読み聞かせや朗読練習の手伝い、遊びへの参加、キャンプや見学への同行もある。職業デーには、さまざまな職業の保護者が自分の仕事を紹介し質問に答える。

学校全体やグループで進める催しは、保護者の参加が常に歓迎される。保護者は学校教育への参加を通して、自分の子どもだけでなく、学校にいる子どもたちとも触れる。全教員の姿も見ながら、教員と協力してより良い共同体を築く努力をする。これらが、「社会は自分たち次第で明るいものになる」という夢と確証を子どもたちに持たせることにつながる。