職業としての教員―「教師」というレトリック(2)対立する二つの役割

教職員支援機構上席フェロー 百合田  真樹人

教員は学校教育制度の下で実践を担う役割を与えられる。教員とは役割を付与された職業的なアイデンティティーだと言える。

教員の役割は学校教育制度や関連法規に規定されている。言い換えれば、教員は学校教育制度の枠組みの中、制度的に設定された場で、制度的に用意された教える側と教わる側の関係性を維持しながら、教育実践を担う役割が与えられた存在である。

だが、教員の役割は多岐にわたる。制度や法規が明示する役割だけでなく、社会的な文脈で学校教育の役割とされたさまざまな事柄も担っている。

放課後や休日の部活動指導、地域の見回り活動などは、社会的文脈で求められた役割の一例である。

経済協力開発機構(OECD)が2013年に実施した国際教員指導環境調査(TALIS)の結果は、日本の教員における長時間労働の実態を改めて浮き彫りにした。日本の教員が正課外活動に割く時間数も、他の国や地域より圧倒的に多いことも顕在化した。

国際調査の結果が示すように、現在の学校教育現場は、制度的な役割と社会的に期待された役割を抱えて疲弊している。

部活動指導に関する近年の議論では、教員の制度上の役割と社会的期待について意見が対立している。現状のアンチテーゼとして、教員は制度的に規定された役割だけに責任を持つとの意見がある。対して、現状をある程度許容する立場では、教員は社会的に期待された役割も担うという考え方がある。

教員と教員集団の役割が雪だるま式に増大する中、教員養成機関の在り方においても個別的で散発的な議論が目立つ。大変革に向けた組織的で体系化された議論はなかなか出ていない。文科省の「学校における働き方改革」の緊急提言や中教審での審議など、行政主導の議論は進められている。

だが、海外で教育研究をしてきた筆者には、学校教育現場を担う教員の「役割」が二つの視点で対立しているのは極めて不思議な現象に映る。

この二つの視点は教員集団の自律性を巡り、根本的な問題になっている。教員が役割を基準にした職業的アイデンティティーを持とうとする中で、自律的な判断や行動の選択を自制してしまう問題がある。

これについては、次回に詳しく触れたい。

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