イエナプラン ―インクルーシブな学びの実現―(12)大人こそアクションを

日本イエナプラン教育協会特別顧問 リヒテルズ 直子

教育関係者は欧米や日本などの先進諸国だけでなく、遅れて産業化した国々でも、学校がどんなビジョンを掲げ、これからの人間形成に取り組めばいいかで悩んでいる。

経済や産業のグローバリゼーションは、地球上の経済活動をつなぐ一方で、世界の貧富の格差を拡大させた。情報のグローバリゼーションは、地球上のあらゆる場所を瞬時につなぐ一方、虚実が見極めにくい社会を生んでいる。産業の発展は地球環境を破壊し、AIは労働と雇用の形を変えつつある。こんな時代に次世代の人間形成は、どんなビジョンで何を目指して進めればよいのか。

2018年、OECD(経済協力開発機構)のCenter for Global Education at Asia Societyは、報告書「急速に変化する世界でグローバル能力を教える」で、これからの学校が目指すべきグローバル能力を四つに整理した。①世界を探求する力(身近な環境を超えて世界を探求する)②異なる見解を認める力③考えを伝える力(自分の考えを多様な聞き手に効果的に伝える)④アクションを起こす力(状況を改善するための考え方と行動力)――だ。

OECDの四つのグローバル能力

こんな能力像が示される中で、多くの国は、いまだに経済発展で国力を増大させようと、公教育の目的を国家間の競争に勝てる人材養成としている。この競争が地球環境を破壊し、国家間や宗教間の対立を増大させている。

この四つのグローバル能力を、イエナプラン教育に照らすとどうだろう。イエナプランのビジョンは、創成期以来ずっと、インクルーシブな世界市民の育成を目指してきた。これまでの連載で解説したイエナプランの取り組みのうち、ワールドオリエンテーションは世界を探求する力を育てる。異年齢学級の四つの基本活動はどれも自分と異なる他者と共生するためのスキルの育成である。主体性と自治を認められた子どもたちは、さまざまなアクションを起こしている。

明治以来の日本の公教育は、国力増進のための人材育成に大きく傾いた。その間、不登校やいじめ、校内暴力、落ちこぼれといった問題は、解決されずに放置され続けてきたと言える。その結果、今の日本では、世界への探求意欲を持ち、自他の違いを受け入れるような人材の育成が乏しい。自分の考えを相手に説き、社会変革の行動を起こすことに消極的な人が優等生や社会のリーダーとして育てられている。落ちこぼれる子どもたちへの関心も向けられていない。

変革は、15分のサークル対話や子どもたちの疑問への真剣な向き合いからも始められる。保護者と教職員が対話する努力も必要だ。アクションを起こさなければならないのは、子どもではなく大人の方である。(おわり)

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