全国学力調査から見えた 伸びる学校の条件(1) 家庭の社会経済背景と学力

お茶の水女子大学教授 浜野 隆

本連載では、2017年5月に実施した文科省の全国学力・学習状況調査の保護者調査と同調査の過年度の結果分析から、子供たちの学力向上と学力格差の克服に向けた取り組みを考えたい。調査の対象は、全国の小学6年生の保護者約6万人、中学3年生の保護者約7万7000人になる。

連載のタイトルは「伸びる学校の条件」だが、必ずしも学校だけを扱うわけではない。子供の学力には、学校のみならず、家庭環境も大きな影響を与えている。そのため、学校と学力の関係だけの分析では不十分だ。家庭という要素も同時に考えなければならない。子供たちは皆、それぞれの家庭環境を背負って学校に来ている。そのため、学校での取り組みも家庭状況を踏まえて進める必要がある。必要に応じて、家庭に対する積極的な働き掛けをすることも重要である。

全国学力・学習状況調査の保護者調査では、家庭における親の子供への働き掛けや親の意識・行動、家庭の社会経済背景(家庭の収入や保護者の学歴など)を調査している。家庭の社会経済的な背景は子供にとって、いわば与えられた環境だ。それが学力と強い相関関係にあることが明らかになった。

世帯収入と学力の関係(文科省委託「全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」から)

世帯収入(税込年収)と子供の学力の関係を見てみよう。図は、世帯収入別に子供の学力(小6「算数B」の正答率)を示したものである。これを見ると、年収200万円未満の世帯と1500万円以上の世帯との間には、23ポイント以上の正答率の差があることが分かる。

親の学歴を見ると、父親、母親共に、学歴が高い方が子供の学力も高い。小6「算数B」では、父親の最終学歴が「高校・高等専修学校」だと正答率は41.1%、「大学」だと53.9%である。母親の最終学歴が「高校・高等専修学校」だと正答率は40.5%、「大学」だと58.0%である。

教育学や社会学では、世帯年収や保護者の学歴などの家庭背景をSES(Socio-Economic Status)という言葉で表現する。世帯年収と保護者の学歴を合成したSES得点を算出し、子供の学力との関係を見ると、最も高いSES(上位4分の1)と最も低いSES(下位4分の1)とでは、「算数B」の平均正答率に約21ポイントの差がみられた。同様の傾向は学年や教科・問題を問わず確認できる。

家庭の社会経済背景と子供の学力に関係があることは、以前から指摘されてきた。全国学力・学習状況調査という全国規模の調査でその傾向が改めて証明された意味は大きいと思われる。


【略歴】

浜野 隆(はまの・たかし) 名古屋大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。 2004年からお茶の水女子大学に勤務し、主に教員養成を担当。都教員研修センターで教員への教育評価について指導する。専門は「学力と教育政策」。文科省委託の「全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の研究代表として家庭の社会経済的背景と学力、非認知的スキルの関係を分析。著書に「教育格差の社会学」(共著、有斐閣)「世界の子育て格差―子どもの貧困は超えられるか」(編著、金子書房)など。