全国学力調査から見えた 伸びる学校の条件(2)学力格差を克服する家庭とは

お茶の水女子大学教授 浜野 隆

前回は、世帯年収や保護者の学歴などの家庭背景(SES)と子供の学力の関係を見た。一般的に、SESによって学力に差が生じることを「学力格差」という。OECDのデータによると、日本の学力格差(家庭の社会経済文化的背景が1単位変化したときの学力の変化)は、OECDの平均よりもやや大きく、国際的に見ても決して小さい方ではない。

全国学力・学習状況調査の保護者調査は、これまで2013年度と17年度の2回実施されている。この2回の間、SESが学力に及ぼす影響の大きさはさほど変化しておらず、現在も学力格差は重要な問題であると思われる。

SESと学力との関係は確かに強いが、あくまでも平均値の比較から見たものである。低いSESにあっても、その環境を克服して高い得点を取っている子供もいる。学力格差克服のヒントは、彼らやその家庭にあるのではないか。

ここで一つ注目しておきたいのは、SES各層別に見た「学力のばらつき」である。最も高いSES(上位4分の1)と最も低いSES(下位4分の1)とを比較すると、最も高いSES層は学力のばらつきが小さく、最も低い層では大きい。最も低い層において学力のばらつきが大きいということは、不利な環境を克服し、高い学力を達成している児童生徒も一定数存在するということである。決して、SESという「環境」によって全てが決定するわけではないことを強調しておきたい。

年収300万円未満世帯の学力層別特徴

では、不利な環境を克服している家庭にはどのような特徴があるのだろうか。ここでは、年収300万円未満の世帯で学力A層(高学力を達成している児童)に入っている子供が、それよりも低い学力層(B~D層)に比べてどのような特徴があるのか、家庭の特徴を分析した。

その結果、経済的不利を克服している家庭の特徴として次のような点が明らかになった。▽毎日子供に朝食を食べさせている▽子供に本や新聞を読むようにすすめている▽子供と読んだ本の感想を話し合ったりしている▽子供と図書館に行く▽(保護者が)地域や社会で起こっている問題や課題、出来事に関心がある――である()。

すなわち、基本的生活習慣を整え、子供を文字文化に親しませ、かつ、保護者自身も社会や地域の課題に関心を示している家庭において、子供は学力格差を克服している。いずれも高額の投資を要するものではなく、今すぐできる家庭の取り組みである。