職業としての教員―「教師」というレトリック(10) エビデンス・バンクの構築

教職員支援機構上席フェロー 百合田  真樹人

教職員支援機構(旧教員研修センター)は、それまでの学校関係職員の研修機能に調査研究機能を加えて、2017年4月に新たな組織として再出発した。

教育実践者は、急速に変化する予測困難な社会に適時適切に対応し、自律的に判断しながら行動する主体としての在り方が求められている。こうした在り方は、従来の教員に求められてきたそれとは大きく異なる。教員養成機関と教育委員会との連携強化をはじめ、教員の養成、採用、研修の一体化も、21世紀に教育実践を担う主体としての在り方を模索する上で、極めて合理的な要請だろう。

これまでの教員養成機関は、ドメスティックな学校教育制度とその枠組みを前提にしてきた。そこで養成された教員集団が、枠組みを超え自律的に判断、行動する主体として、新たな役割や機能を探り、その共通認識を構築していくことは容易でない。特に、教育政策や実践のレトリックを巡るこれまでの受容的な姿勢を克服するには、相当な難しさがあるといえる。

今、教育政策の策定とその実践展開に必要な変化は、政策立案の根拠となるエビデンスを明確に示すことだろう。学校教育や教育政策を研究フィールドにする研究機関や研究者は、政策立案に役立ち、また立案された政策を建設的に評価・批判できるエビデンスの構築と蓄積に取り組み続ける必要がある。

教育政策や実践に限定するものではないが、公共政策や公共性の高い実践については、調査研究を通して蓄積されたエビデンスを「共通言語」として活用し、その有意性や有効性を検証する「開かれた議論」の構築が求められる。そのような議論があってこそ、対話的合理性に基づく政策や実践の民主的な在り方が可能になる。

教職員支援機構の調査研究事業を通して、政策の立案や判断に役立つ幅広いエビデンスを蓄積する「エビデンス・バンク」の構築に貢献したいと考えている。また、養成機関や教育委員会、教育実践の主体である教師や保護者、さらには市民が、対話的合理性を形成する議論の場で「共通言語」となるエビデンスを活用できるよう、後押しする必要もある。国際調査研究というマクロなエビデンスに限らず、授業実践などのミクロなエビデンスも蓄積し、それらを共通言語として活用した政策の策定・批判を可能にする――。それによって、わが国の教育実践と教育環境の改善、向上を図ることが何よりも肝要だと考える。

(おわり)