「司法面接」子供から正確な証言を引き出す技術(1)学校での事実調査

立命館大学教授 仲 真紀子

学校も事件や事故と無縁ではない。子供同士のけんかやいじめ、校則違反に加えて、教員による体罰やわいせつ行為が疑われることもある。事故や過失が問題になる場合もあれば、子供が教員に家庭での虐待を打ち明けるケースもあるだろう。このようなとき、教員は子供からどのように話を聞けばよいか。特に、以下の4点は重要である。

第一に、誘導や暗示のない正確な情報の収集に努めなければならない。

第二に、中立、客観的で公正な聞き取りを行わなければならない。事件や事故では、相対する当事者が存在することが多い。一方の側に立って聴取すると、相手方は不満を募らせるかもしれない。

第三に、加害、被害によらず、被面接者の精神的負担に配慮しなければならない。聴取すべき内容は事件、事故などの「嫌な」体験である。嫌な内容を話すのは誰にとっても辛いものである。教師が入れ代わり立ち代わり、繰り返し聴取すれば、子供に精神的二次被害が生じ得る。

第四に、聞き取った状況や内容は正確に記録しておかなければならない。そうでないと、後で「言った、言わない」など、事件・事故以上に大きな問題に発展することがある。

本連載では、事件・事故における学校での事実調査、特に子供への面接の方法を取り上げる。筆者の専門である発達心理学、認知心理学の知見を踏まえ、まずは、事実の調査で起こりがちな大人の側、子供の側の問題を整理する。その上で、どのように聴取すればよいのかを「司法面接」の方法を参照しながら紹介する。

司法面接とは、①法的な証拠としても使用可能な正確な情報を、②被面接者の精神的負担をできるだけ掛けずに聴取する――ことを目指した面接法である。1990年代、主に欧米で児童虐待などの調査のために開発された。日本でも2010年ごろから児童相談所や警察、検察などで導入されるようになった。近年は、いじめなどに関する重大事態の調査や、障害福祉サービス事業者への指導監査でも用いられることがある。

名称に「司法」と付いているがために、学校とは無関係だと思われがちだが、事実に焦点を当てた基本的な調査面接法である。学校でのさまざまな事実調査にも使用することができる。


【プロフィール】

仲真紀子(なか・まきこ)お茶の水女子大学大学院人間文化研究科単位取得満期退学。学術博士。2017年より立命館大学総合心理学部教授。北海道大学名誉教授。専門は発達心理学、認知心理学、法と心理学。著書に「子どもへの司法面接:考え方・進め方とトレーニング」(有斐閣)、「法と倫理の心理学」(培風館)など。