【校長としての心構え(3)】ガバナンス確立の大切さ その1

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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真っ先に取り組むべき課題

学校改革の基盤

今回は「ガバナンスを確立することの大切さ」である。「大切シリーズ」は3回目であるが、これを一番先に述べるべきだったかもしれない。

というのも、ガバナンスが確立していなければ学校を改革しようとしても、結局何もできないからである。いわば笊(ざる)で水をくんでいるようなものであろう。もし学校のガバナンスが確立していないと感じたら、すぐに取り組まなければならない。

傘立てで見極めよ

ある経営コンサルタントの方の本に書かれていた話である。著者はいろいろな会社を訪問して、さまざまなアドバイスをしている。会社のガバナンスの状況によって、アドバイスの有効性が大きく違うという。

従って、訪問した会社の状況をいち早く見極める必要がある。いろいろ考え、ある答えにたどり着いた。正面玄関脇にある傘立てを見ることだという。

ホコリをかぶった、誰のものか分からないような傘が置かれている会社のガバナンスは、あまり良い状態でない。それに対して、ホコリがなく、清潔に保たれている会社のガバナンスは良好である、と判断する。

普通、会社の社員は、自分の置き傘を自分のロッカーにしまうだろう。玄関脇の傘立てを使う人は、当然その会社の訪問客である。客が忘れた傘をそのままに放置しておく会社であれば、ガバナンスはあまり良好とはいえない。これまでいろいろな会社を訪問してきた中で、この判断が大きく外れたことはないそうだ。

これを読んで、西高の玄関脇にある傘立てを思い浮かべた。ホコリをかぶった傘が多く置かれているのに気付いた。あれを何とかしなければ……。

ところが、これらの傘は急な雨のとき、生徒に貸し出しているようである。せっかく役に立っているので、きれいに片付けてしまうのは躊躇(ちゅうちょ)された。正面玄関の傘は片付け、別の場所で貸傘をすることも考えた。

しかし、傘の一部は在校生の保護者が置き忘れたもので、時々取りに来ているようである。その見分けがなかなか難しい。傘の片付けは、強引にやればできなくはない。だが、それで学校のガバナンスが確立するとも思えない。

どうも学校は、会社と異なる面があるようである。

時と場所の管理を明確化

玄関脇の傘立てが常にきれいなのはなぜか。傘立てを管理する人が明確に決まっていて、その管理者が自覚を持って傘立てを清潔にしているからである。持ち主が不明な傘があったときにどうするかも、マニュアルができているはずだ。

これを拡大して考えればよい。大切なのは、時と場所の管理者の明確化である。「この時間のこの場所は誰が管理しているのか」を明確にすればよい。

通常、教室は担任、特別教室は教科、体育施設は体育科と場所に関しては、管理者が定められている。だから、決められた管理者がきちんと職務を果たしていればよいことになる。授業観察のついでに準備室に寄ったり、警備の方に確認したりすればよい。

場所については安心できた。次は、時間である。授業時間中は全く問題がない。教員はほとんど始業チャイムと同時に授業を実施している。空き時間の教員が二人一組となって、安全点検のために巡回しており、何かあればすぐ連絡が入る。年間3回授業観察を行うので、管理職も常に教室に出入りしている。

西高は自由選択時間がほとんどないので、授業中校内をうろついている生徒もいない。一方、生徒は学級日誌を実に丁寧に書くので、授業中の様子も手に取るように分かる。担任と生徒のやり取りも面白い。問題は放課後のガバナンスをどうするかである。

(この項は続く)

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