全国学力調査から見えた 伸びる学校の条件(9)基礎・基本の定着を図る

お茶の水女子大学教授 浜野 隆

「教育効果の高い学校」の特徴として五つ目に挙げられるのは「全ての子供に基礎学力を定着させる」姿勢である。本連載の第5回でも述べたように、教育効果の高い学校は、誰一人取り残さないという方針を持っている。「誰一人取り残さない」とは、できない子や遅れがちな子、不利を抱えた子を排除せず、包摂的(インクルーシブ)に学ばせるということである。誰一人取り残さない姿勢こそがインクルーシブの本質であり、ここまで述べてきた「教育効果の高い学校」とはまさに「インクルーシブな学校」だと表現できるだろう。

教育効果の高い学校は、どの子供にもごく基本的なことを定着させる取り組みが徹底されている。具体的には「朝の始業前や昼休み、帰宅前に十数分のドリルを行う」「宿題としてドリルを課す」「単元末テストを家庭に持ち帰らせ、保護者のチェックを経て、ファイルに蓄積する」「子供に自分の弱点を補強する学習をさせる」などの取り組みがみられる。

一人一人の子供の基礎・基本の定着を図るには「個に応じた指導」が必要である。少人数指導、習熟度別指導、ティームティーチング、補充学習なども積極的に取り入れられている。教育効果の高い学校ほど「算数の授業で習熟度別少人数指導を行うに当たり、一つの学級を二つ以上の学習集団に分けた」(小学校)、「数学で補充的な学習指導を行った」(中学校)という回答が多くなっている。

「個に応じた指導」は適切なタイミングで行われることも重要である。図は小4のときに算数の授業でティームティーチングによる指導を行った割合を尋ねたもので、教育効果の高い小学校ほど「多く行った」回答の割合が高いことを示している。小4は算数の内容も高度になり、家庭の経済力による学力差が顕在化する時期でもある。この結果は、個に応じた指導とともにそのタイミングの重要性も示唆している。

基礎・基本の定着には「学力調査の積極的な活用」も有効である。一口に「基礎・基本」といっても、各教科がカバーする範囲は広い。具体的にどの分野、観点で改善が必要なのか、学校と個人のレベルで把握していることが学力形成には肝要である。

教育効果の高い学校では、学力のモニタリングでさまざまな学力調査を学力向上の基礎資料として有効に取り入れている。学力調査の結果に一喜一憂するのではなく、自校の課題を知る一つの機会と理解して「基礎・基本」の指導に生かしている。