「司法面接」子供から正確な証言を引き出す技術(2)聴取における大人の問題

立命館大学教授 仲 真紀子

今回は、事実調査で陥りがちな「大人の側」の問題を取り上げたい。

言うまでもないが、学校が抱える業務は多く、教員は常に忙しい。次々に持ち上がる事案や事件。それらを急いで解決しなければ次なる課題が待っている。こういうとき、私たちはついスキーマ(枠組み的な知識、いわば仮説)に基づく事実確認をしがちになる。スキーマに沿った情報だけを収集し、そうではない事実は無視してしまう。こういった傾向性を「確証バイアス」という。出来事に関して十分な情報を得られないまま、「やった/やらない」「良い/悪い」などの判断を下してしまう傾向にある。

「生徒が騒いでいるので急いで駆け付けてみたら、給食の鍋が床に落ちていて、 A子さんが横で泣いていた」としよう。数人の子供が雑巾で床を拭いたり、雑巾を絞ったりしている。このような状況に遭遇すると、教員ならば咄嗟(とっさ)に次のような質問をしてしまうかもしれない。

大人による司法面接の研修風景
暗示質問=「あらら、誰がお鍋を落としたの」

鍋は他の原因で落ちたかもしれないのに、「誰かが鍋を落とした」仮説の下に質問をする。形式は「WH質問」であるが、「誰かが鍋を落とした」という強い暗示となり得る。

〇クローズド質問=「A子さんが落としたの」「重かったのかな」「手が滑ったの」

事態の解明を急ぐ教員は、先のような仮説に沿った質問をさらに重ねるかもしれない。「はい/いいえ」または選択式の質問を、回答の幅が閉じた質問という意味でクローズド質問という。クローズド質問を繰り返すと、仮説の内容が子供の頭に送り込まれる。これは誘導や暗示になる可能性がある。

圧力=「話してくれたら大丈夫だから」

情報が出てこないと、さらに圧力を掛けることもある。

解釈・補足=(「鍋が…」と泣きながら話し始めたA子さんをさえぎり)「重くて落としちゃったのかな」

勝手に解釈や情報を補足することもある。

誘導質問=「重くて、手が滑って落としたのね」

仮説に基づく結論でまとめてしまう。「~ね」「~でしょう」と同意を求めて尋ねると、被面接者は「うん」と受け入れてしまいやすい。こういった質問を誘導質問という。

後に鍋の取っ手やねじが見つかり、実は取っ手が外れて鍋が落ちたことが判明した。

日常の指導場面で、こうした質問を子供たちに投げ掛けていないだろうか。