クオリティ・スクールを目指す(143)桃太郎はなぜ強い

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

日本の昔ばなしの知恵に学ぶ

最近の子供は日本の昔ばなしに関心を持たなくなった。面白いビデオがあっても見ようとしない。ところで、学校の紹介で落語を楽しむ会があるというので小学校4年生の孫と聴きに出掛けた。会場は親子連れで満員だった。

鈴々舎馬るこ師匠はベテランらしく、落語の意味ややり方など上手に話してくれた。寿限無(じゅげむ)は子供も知っていて唱和していた。少しだけ桃太郎の話も落語的に語っていた。

そのことを思い出して、「桃太郎はなぜ強いか」を検討する教師たちの集まりを行った。特にイヌ、サル、キジの家来(登場の順序を間違える教師が結構いる)が持つ役割から桃太郎の強さを考えさせる趣向である。

まず、個々で考える。それから4人ほどのグループでそれぞれの考えを話し合う。最後に全体で協議し、まとめる。その進め方は、「主体的・対話的で深い学び」のプロセスをごく単純化した形である。

結果を言えば、イヌは主人に忠実で行動力があり、命令とあれば鬼のような強い敵でも向かっていく。サルは知恵があって作戦を練るのが得意、いわば思考力が抜群である。キジは空を飛ぶことができるから、鬼ヶ島の内情を探るのにうってつけ。つまり、情報獲得力に秀でている。

イヌの行動力、サルの思考力、キジの情報力を組み合わせたのが桃太郎の強さなのである。それは現代にも通じていて、一人の人間に必要とされるのは、行動力、思考力、情報力を合わせた総合的な力である。

私が国立教育研究所(当時)に勤務していた1994年の4月、愛知教育大学附属岡崎中学校の生徒4人が訪ねてきた。修学旅行で東京に来て、グループに分かれて会社などを訪問しているという。事前に手紙が来ていて、①現在の学校教育の課題と解決策②社会・国の考える学校教育③シュタイナーなどの教育を日本であまり取り入れていない理由④今後、学校はどう変わるべきか――を聞きたいという。

4人に特徴的だったのは、受験などからくる抑圧感が強く、自由な雰囲気を求めている様子が顕著だったことである。他校の友達の話として、部活動で一日休むだけでひどく叱られ、今は叱られないためだけに参加している、といったことを話していた。

そこで「自由」を掲げる私立学校を訪問したが、生徒にとって必要なのは「自己決定」だと何度も言われたという。しかし、その意味が分からない、と語っていた。

私は「桃太郎」の話をした。「自己決定」には、情報や知識が必要であり、それらを生かす知恵や思考力が大切、その判断から選択力や行動力が生まれる、と。

4人からの手紙に「桃太郎の話が印象的でした。そんな深い意味が隠されているとは知りませんでした」と書かれていた。