【校長としての心構え(5)】数字に強くなることの大切さ その1

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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目標とする校内偏差値は

大事な生徒に関する数値

「大切なこと」に言及するシリーズ。今回と次回は、数字に強くなることの大切さを紹介する。経営的に見れば、数値が大切であるのは当たり前と思われるかもしれないが、学校経営においてどのような数値にスポットを当てるのがよいかを探るのは意外と難しい。

まず、学校経営の基本となる、生徒に関する数値を取り上げてみたい。

校長として気になる入選倍率

入学者選抜における自校の受検者の倍率は、新聞発表されるので、校長としては気になる数値であろう。

塾の先生に聞くと、生徒が高校を選ぶ基準は学力レベル以外にも学校の雰囲気、施設設備、部活動、通学距離、制服など、非常に多様であるという。

急に倍率が上がった学校の理由を調べると、制服の変更や新しい路線の開拓などがあったという。残念ながら「経営方針」や「教育方針」という理由はあまり聞かないそうである。

校長はまず、自校を希望する中学生が何を基準にして選んでいるかを知ることから始めないといけないようである。

毎年2千以上の塾を回り、3倍近い入選倍率を獲得した校長が言うには、塾がほしいのは「困ったときに相談に応じてくれる管理職の電話番号が記された名刺」とのことだ。これを置いてすぐに立ち去るのが塾訪問の基本だそうである。

成果の結晶ともいえる出口の数字

逆に、出口に関する数値も興味がある。現在の都立高校は大学合格者数を目標に掲げている学校が多い。西高は大学合格者の数値は結果であり、目標には適さないと考え、過去に個別大学の合格者数を目標値にしたことはなかった。

その代わりに目標にしたのが、センター試験の点数である。センター試験とはいえども毎年少しずつ難易度は異なる。同じ8割であっても、比較的易しい年の8割と難しい年の8割では、二次試験の出願状況にも大きな差が出てくる。

そこで考え出したのが、「西高生の平均点マイナス全国の平均点」という考え方である。例えば西高の国語の平均点が150点で、全国の平均点が120点であると、国語は+30点となる。

このように西高生が多く受験する13の科目の全国平均との差を合計してみると、全国の平均点を200点ほど超えていた。これを基準にすることによって、年度による難易度の差を気にする必要がなくなった。

ちょうど良いので、各教科毎年1点だけ上げるようにしようという目標にした。1点くらいと思うかもしれないが、これがなかなか難しい。合計で13科目あるので、目標通りいくと、毎年13点合計点が上昇する。センター試験が13点上昇すれば、大学の合格実績が明らかに上昇する。

生徒には分かりやすい目標値を

これ以外にも入学満足度や授業満足度、日常の成績や遅刻者数、部活動加入率など、生徒の状況を表す数値はいろいろある。

例えば遅刻者を2割減少させようと思えば、昨年度の遅刻者総数、クラス平均、週平均を出し、それを基に何回以上の生徒に指導をすればよいかを割り出す。

そして、生徒に「〇回以上の遅刻者には学年指導」「□回以上の遅刻には保護者指導がある」との基準を明示すれば、確実に遅刻者の減少につながる。

日常的な成績も気になる。当時、教育委員会が定めた難関国公立大(東大、京大、一橋大、東工大、国公立医学部)合格者は、校内模擬試験で校内偏差値が53であった。したがって、生徒には53以上の校内偏差値を目指すように、アバウトに言えば、偏差値50以上を維持していくように指導した。

このように、生徒に対しては分かりやすく印象に残る数値を示すことが大切であろう。

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