寺脇研の平成の教育30年史(6)省庁再編直後のPISAショック

星槎大学客員教授 寺脇 研

2001年1月、省庁再編で文部科学省が誕生すると、同時に大規模な組織再編、人事異動があった。私自身、政策課長から新設の生涯学習政策局を担当する大臣官房審議官となり、引き続き教育改革を担当することになった。

初等中等教育局は、学校に関する財務・管理部門を担当する教育助成局と統合され、教育内容から財務・管理まで広範囲を受け持つようになる。このとき、これまで02年から実施される次期学習指導要領の準備作業に携わった局長や課長のほとんどが転出し、代わって旧教育助成局系の仕事をしていた幹部たちが局の中枢ポストに就いた。

彼らにしてみれば、「ゆとり教育」に全く関与していないにもかかわらず世間の学力低下批判にさらされるわけで、腰を据えて次期指導要領の意義を主張する気にはなりにくかっただろう。

また、小野元之事務次官も教育内容に関する行政経験が皆無に等しい経歴だったこともあり、事務方トップとして外部からの批判に敏感にならざるを得なかったのではないか。

あるいは、旧科学技術庁の幹部は、その多くが理科系の出身で、数学や理科の内容削減に不満を持っていたから、全体を統合する立場として配慮した部分もあったのかもしれない。これが前回述べた読売新聞報道につながったきらいがあるのは否めないと思う。

01年4月には小泉純一郎政権が発足し、文科相には、元文部官僚で民間人の遠山敦子氏が就任する。遠山大臣は官僚時代に高等教育関係の経歴が長く、また、次期指導要領が告示され、まだ高評価する世論があふれた96~99年までは、駐トルコ大使となり日本に不在だった。

そのため、帰国後に学力低下論に接すると、同意するところがあったらしい。それまでの歴代大臣たちのようには、この教育改革を積極的に推進する気配がなかった。

加えてこの年、前年に行われた経済協力開発機構(OECD)による新しい学力調査「生徒の学習到達度調査(PISA)」の結果が公表された。

15歳を対象に数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解リテラシーの3分野を測るこのPISAに参加した32カ国中、日本は数学的リテラシーが1位、科学的リテラシーが2位だった。

しかし、読解リテラシーは8位という点に世間の批判が集中した。20世紀までの各種国際学力調査では、日本は常にトップの座にいたからである。

8位とはいっても2位以下は僅差で、2位のカナダとも統計的な有意差はないと文科省がいくら説明しても、日本人は順位に対して過度にこだわる。

その結果、学力低下論は勢いを増し、「ゆとり教育」批判にも拍車をかけたのである。