働き方改革を巡る視座『教育学者としての問い』(1)学生と学者のコラボレーション

学校の働き方を考える教育学者の会

2018年末、私は教員養成系大学に籍を置く5人の現役学生たちと意見交換する機会に恵まれた。

彼らとの対話を通じて、いろいろと驚かされることがあった。中でも教育学を専門にする大学教員としてとても衝撃を受けたのは、教員養成系大学だからといって、教員の働き方改革を必ずしも積極的に議論しているわけではないことだ。それどころか、ほとんど議論されていないといった方が、学生の思いをより的確に表現しているかもしれない。

「大学の中にいては教員の労働の問題点が見えてこない」

そう考えた学生たちは、給特法をはじめとする法制度、国や自治体の改革の動向などの情報を学内の講義や仲間との会話からではなく、インターネットや書籍から得ているという。

言うまでもなく大学は最高学府である。最先端の議論を創出し主導する立場にある。ましてや教員養成系ならば、教員の長時間労働の実態やその背景を率先して可視化しているはずだと私は信じていた。だが実際のところ、大学は学生の関心に応える場になっていない。

私自身も、長らく教育学に携わる中で、教員の過重負担や背後にある法制度についてはほぼ無関心だった。いじめや不登校、スポーツ活動中の負傷事故など、広く教育問題・教育課題と呼ばれるものについて、ただひたすら「先生方はまず研修で勉強してください。子供のために頑張ってください」と言い続けてきた。

「子供のため」という美辞麗句を用いて、学校現場に業務を次々と押し付けたのは、私だけではないはずだ。「学校の働き方を考える教育学者の会」の呼び掛け人である日本大学の広田照幸教授は「教育学者が教員に対し『こんなに教育は素晴らしいから頑張れ』と追い詰めた部分があることには、個人的には責任を感じる」と述べている(『教育新聞』電子版、18年12月4日付)。教育学者はこれまでの罪を償うべく、教員の働き方改革を主導することが求められている。

実は今、全国各地の教員養成系大学の学生が、各大学で教員の働き方を考えるイベントを立ち上げている。そのいくつかは「学校の働き方を考える教育学者の会」が「後援」している。教育に携わる学生と学者とのコラボレーションだ。

遅まきながら、アカデミズムからも教員の働き方改革が始まろうとしている。

(内田良)


【プロフィール】

うちだ・りょう 名古屋大学准教授。専門は教育社会学。主な著書に『教師のブラック残業』(学陽書房、共著)、『学校ハラスメント』(朝日新聞出版)、『ブラック部活動』(東洋館出版社)。