「学級雰囲気」発達障害児が過ごしやすい教室(3)良い環境は全ての子に共通

筑波大学教授 柘植 雅義 監修

いろいろな教室を訪問すると「この教室は発達障害のある子が過ごしやすいだろうな」と思うことがある。一方で、残念ながら「この教室では発達障害のある子は過ごしにくいだろうな。いや、他の子も過ごしにくそうだな」と感じることもある。

発達障害のある子が過ごしやすい教室では、子供たちはどのような状態にあるだろうか。いろいろな教科をしっかり学び、学校生活のルールやマナーをよく理解して、行動できる子供たちが目に浮かぶ。友達や教師と良好な関係を結んで円滑な学校生活を送ることができる状態だ。子供たちは「友達と一緒に過ごしたい」「勉強が楽しい」「先生が大好き」「学校に行くのが楽しい」と感じている。

では、その逆はどうだろうか。少し具体的に見ていきたい。例えば、授業中の教室がいつもざわざわしていて、子供同士のおしゃべりがひっきりなしに続く。あるいは、子供たちが聞く態勢になっていないのに、教師が大事な話を始めてしまう。こうした教室で、発達障害のある子がうまく学ぶのは困難である。彼らのみならず、他の子の学習も難しいだろう。このような状態がさらに悪化すると、教師は子供を制御できなくなり、学級崩壊が起きてしまう。

また、級友の多様性を大事にしない言動、行動がはびこる教室も、発達障害のある子にとっては過ごしにくい環境だ。教師がうまく学べない子をばかにしたり、その子が理解できるように教える努力をしなければ、教師の姿を見ている他の子供にも計り知れない悪影響を与える。新聞の報道によると、ある学校のクラスで障害のある子供を「ガイジ」とあだ名で呼んでいた事例もある。その子は不登校になり、転校を余儀なくされたという。

うまく学べない、行動できない子供に周りの子供が気付かず、支えようとしない教室も過ごしにくい。発達障害のある子供は得意と苦手の差が大きく、さまざまな場面で苦戦することが多い。誰かがそれに気付き、さりげなく、時にはっきりと援助の手を差し伸べることが大切なのである。

過ごしやすい教室の実現は、発達障害のある子だけの問題ではないと分かってきた。彼らが過ごしやすい教室は、他のどの子供にとっても過ごしやすいのである。それは、教師にとってもそうなのかもしれない。

(柘植雅義)