働き方改革を巡る視座『教育学者としての問い』(3)給特法廃止と教員の意識変革

学校の働き方を考える教育学者の会

今日、労働者の過労問題の是正を目指す働き方改革は、ほとんど全ての産業分野の共通課題になっている。

だが、公立学校の教員は他職種にみられない独特の問題がある。超過勤務が法律上の問題にならない仕組みになっていることと、肝心の教員たちがこの問題を十分認識していないきらいがあることである。

教員の超勤問題はこれまでも教職員の定数改善、学校業務の簡素化と運営の改善、外部スタッフの配置といった方策が講じられ、いずれもなにがしかの効果はあった。

しかし、教員の過労問題を抜本的に解決するためには、超過勤務やサービス残業を合法化している給特法の廃止と、教員自身の意識改革や学校観の転換が不可欠である。

そもそも給特法という法律は「教育職員の職務と勤務態様の特殊性」に基づいて制定されたことになっているが、それは建前にすぎない。実際は1960年代に教員の超過勤務を巡って賃金支払い請求訴訟が各地で頻発し、使用者側の敗訴が相次いだ。結果、それらへの対応策として制定されたのである。

給特法の第6条とそれに基づく政令では、▽超勤が教員の健康と福祉を害すこととならぬよう、十分な配慮がされなければならない▽原則として時間外勤務は命じない▽時間外勤務を命じるのは非常災害など、臨時または緊急のやむを得ない必要があるときに限る――としている。ところが手当の支給を必要としないため、実際には超勤に歯止めが効かなくなっている。

このような悪法は廃止するほかない。たとえ廃止しても学校教育に混乱が生じる恐れはない。この法律が適用されるのは公立の教員だけで、私立や国立に適用されないのはその証拠である。

給特法が教員の職務と勤務の特殊性に基づいていて、それなしには問題が生じるというものであれば、国立と私立の教員にも適用されているはずである。

廃止に踏み切れないのは、1兆円ともいわれる財政支出の増加を招くからである。従って、必要とされる公教育費が支出されるのならともかく、それができないのであれば学校教育の範囲を教科教育に限定するしかない。各学校が、法令の基準に基づき定める教育課程の範囲内で活動すればよい。

学校の本来の任務は教科教育である。それ以上に役割を拡大してはならないわけではないが、利用可能な資源の範囲内で行われるべきだ。教員の生活を破壊するようなことがあってはならない。

(市川昭午)


【プロフィール】

いちかわ・しょうご 「学校の働き方を考える教育学者の会」呼び掛け人。国立教育政策研究所名誉所員、国立大学財務・経営センター名誉教授。専門は教育行政学。著書に『教職研修の理論と構造』(教育開発研究所)など多数。