働き方改革を巡る視座『教育学者としての問い』(7)ブラックバイトと教員の働き方

学校の働き方を考える教育学者の会

私は、2013年6月に「学生であることを尊重しないアルバイト」を「ブラックバイト」と名付けた。

ブラックバイトという学生の働き方は、職場での不当な扱いに加えて、学生であることを尊重しないが故に、大学での学びや充実した学生生活を奪う点で大きな問題がある。ブラックバイトを当然視したり受け入れたりすれば、ブラック企業を温存させることにもなる。これは、卒業後に労働者全体の働き方を劣化させることにもつながる。

ブラックバイトやブラック企業をなくしていくためには「労働法教育」が大切である。ブラックバイトやブラック企業では、労働法に違反するケースが頻発している。学生の多くは労基法の知識が十分ではないため、職場で不当な目に遭っても、それが法律違反であることすら気が付かない場合が少なくない。こうした問題意識から、近年、大学や高校、中学校での労働法教育の実践が少しずつ広がっている。

ただし、いくら労働法教育が広がっても、教員の働き方の現状が変わらない限りその効果はあまり上がらないだろう。労働法教育を受ければ、労働者の権利についての知識は得られる。だが、子供たちを教える教員の働き方は、労働法など全く意に介さない長時間労働がまん延している。これでは、せっかくの労働法教育も「絵に描いた餅」で終わってしまう。

給特法では教員の「残業」が原則認められず、十分な手当が出ないと決まっている。にもかかわらず、部活動顧問の仕事が平日の勤務時間外や土、日曜まで行われていたり、多くの教員の労働時間が過労死ラインを上回っていたりする。これらが大きな社会問題になっているのは言うまでもない。理不尽なルールを我慢して受け入れるのではなく、改めていくのが、子供を指導する教員にとっても重要な姿勢ではないだろうか。

「子供のため」という名目で、労働者の権利を尊重しない働き方が放置され続けるならば、たとえ労働法教育が広がったとしても信頼に値するものにはならない。なぜなら、労働法を教える教員自身が、労働法を全く尊重していないからである。

労働法教育を子供たちに授けるには、まず何よりも教員自身や学校現場自体が労働法と労働者の権利を尊重する必要がある。ブラックバイトやブラック企業をなくしていくためにも、労働法の視点から教員の働き方を見直すことが強く求められている。

(大内裕和)


【プロフィール】

おおうち・ひろかず 中京大学教授。専門は教育学、教育社会学。主な著書に『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新聞出版)、『ブラックバイトに騙されるな!』(集英社クリエイティブ)、『ブラック化する教育2014-2018』(青土社)など。

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